ある夏の日、旅に出た。
　幼い頃に、帰りたくて――。





　　ある夏の日





　最寄の駅から歩いて30分ほど、やっとその場所が見えてきた。
「うわぁー……懐かしい」
　思わず呟いた。その視線の先には、ずいぶん昔に見慣れていた景色。
　幼い頃に過ごした、私のもう１つの故郷。

　あれからもう何年だったか、と指折り数えてみた。少なくとも、10年――いや、十数年。それくらい前のこと。親の都合というもので、この場所から引っ越して新しい場所で生活を始めることとなった。それから、ここへはまったく来ていなかった。
　今まで育った環境からも友達からも引き離されて、知らない場所へ行かなければならない。当時の私にしてみれば、それは残酷な話だった。この世界が全てだったのだから。

「こんなに小さかったっけねぇ……？」
　よく遊んだ公園のベンチに座って、辺りを見渡した。
　あれだけ広かったはずの公園も、今ではすっかり小さくなっていた。もちろん、本当は変わってなどいない。自分が大きくなっただけだ。

　空を見上げた。何も変わらない空を。
　あぁ、そうだ。ここには、何も変わらない世界がある。変わってしまったのは私の方。
　この場所は、変わらずにいてくれた。私を待っていてくれた？
　本当は、いつでも来ることができたはずなのだ。もう小さい私ではない。こんな小さかった世界で遊んでいた私ではない。
　改めて見て、本当にこんな小さな世界が全てだった私にしてみれば、新しい場所は、それはどれだけ遠いものだったのか。
　……だけど、もう大きくなって、こんな距離なんて一飛びだったはずなのに。
　足りなかったのは、体の大きさなんかじゃない。届かなかったのは、距離の長さなんかじゃない。
　やっと、やっと辿り着けたんだ。帰ってこられたんだ。この場所に。

　幸せな日、なんでもない日、忘れていたことすらも、たくさんの思い出が心から溢れ出した。
　一粒一粒に、幼い日の出来事が刻まれていて。私は、それを落とさないように、抱き締めた。
　幼い頃に忘れてきた記憶も、大切なものは眠っていて、ずっとここにあったのだと。それにやっと触れられた。

「ごめんね。ありがとう」
　そう呟いて、ゆっくりと立ち上がった。

　肩越しに手を振って、新しい場所へと帰っていく。

「またいつか」

---

　半フィクション。大体事実（ぇ）タイトルが内容にあまり関係ないのもそのせいである。
　予想よりも変わってなくてむしろびっくり。もちろん変わっていた場所もあったけど。なんだか忘れていた記憶まで思い出したよ。
　しかし、小さい頃って幸せしか知らなかった気がするなぁ……美化されてるだけかもしれないけど。苦しみがあっても割とたいしたことじゃなかったんだよね。次の瞬間には忘れてる。あぁ、大人になるって嫌だよねー（いい大人が何を言ってるか）
　――広かった世界は今はとても狭いものになっていたけれど、何も変わっちゃいなかった。ずっとここにあった。――
　あ、もちろん。今まで過ごしてきた場所は、どれも大切な思い出ですよー。幼い頃だけに限らず、ね。
　それと、しょっちゅう（？）こんな文章を書いてる自分にNGワード「厨二病」……ツッコミはいりません！
　……おっと。あと、更新の話をちょっと。
　本当は、オリジナルゲームの体験版をアップしようと思っていたのだけれど、細かい調整してたら間に合いそうになかったので……。
　というか、ゲームの需要はあるのか、そもそも。
「このチラシの裏の駄文こそ需要ねーよｗ」とか思っても、そこは言わないでっ！
　それと、秋中には、ちゃんとサイト復活させたいねー。まぁ単純に気持ちの問題（？）みたいなものなのですが。