グローリ・ワーカ   第11章:自分VS自分

「ねぇ……、シリア。マニュアちゃんの中でなにが起こってるの?」
「私たちはもう大丈夫だけど……」
 ティルとアルトは音に打ち勝った。
 というか、魔王は酸欠で倒れていた。
 シリアがティルの問いに答える。
「お姉ちゃんは、今、戦ってるの。自分自身と……!」
「どーゆーこと……?」
「前ページを見て!」
 投げやりシリア! っておい! そーゆーことするなぁ!
「ふむふむ」
「マニュちゃんって、二重人格だったのですか……」
「で、人間界がピンチって?」
「別にあいつが負けても、あいつごと倒すぞ」
 ひどいストームだった。
「お姉ちゃんは本当に強いのよ。呪法だって、普通の魔族に比べても段違い。魔女と呼ばれる、位の高い呪法のスペシャリストがいるけれど、それに劣らないくらいに。そんなのがあなたたちの敵として現れたら? あっという間に死の呪法を使われて――一溜まりもないわよ」
 マニュアの意外な一面だった。
「え……。それって、つまり――」
「マニュアが勝てばいいけれど、ミリアが勝ってしまったら――人間界はオシマイかもね」
「「「「「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」」
 シリアの言葉に悲鳴に近いを上げる。
「た、たった1人の力でそこまで……!?」
「お姉ちゃんは本当にすごいんだから!」
 あれだけ恨んでいたにも関わらず、そう言うシリア。やはり、本当は自慢の姉であるのかもしれない。
「う、う〜ん……。マァーッ!!!! 頑張ってぇ――――!!」
「マニュちゃーん!」
「ホワさんッ!」
「フレー! フレー! マ・ニュ・アァ〜!!」
「おいっ! ホワイト! 負けんなよ! 負けたら昔のあだ名ばらすぞ!」
「勝てよっ!」
「……マニュア……!」
 みんなで声を張り上げ、マニュアを応援する。
 そして、それを見ていたシリアも――、
「……マニュア……お姉ーちゃぁ――――ん!」
 マニュアの名を呼んだ。叫んだ。仲間に愛される姉……負けないで、と。
 感動のシーン。
 ――っと、そこへ!
「エイク アビリティ アゴニー フィア デス!!」
「「「「「「「うわああああぁぁ……っ!?」」」」」」」
 意識を取り戻した魔王が、とつぜん、死の呪法を放ってきた!
「フ……。油断は禁物だ……!」
 だが、8人は倒れなかった。
 気力を振り絞って、叫んだ。
「くっ……、うぅ……。マニュア……ちゃん……!」
「マニュちゃぁん……」
「ホワさん……」
「ホワイトォ……!」
「くそっ……! あいつ……! 頑張れよ……!」
「リーダー……。しっかりしてくれ……」
「マニュアァァ――――!」
「お姉ちゃん……」
 その声は、果たしてマニュアに届くのか……!?

 そして――、
「くっ……!」
「! ……決着が着いたみたい……」
「えっ……!?」
 シリアの言葉に、全員、マニュアのほうを見る。
 マニュアはふらつきながらも立ち上がり、ゆっくりと顔を上げた。
 その表情、その瞳は――、
「お姉……ちゃん……」
 さて、いったい、どちらが勝って、どちらが負けたのか――!?
 マニュアなのか、ミリアなのか!?
「……っ」
 そして、口を開けて、彼女の喋った言葉は――。
「……人間界は――破壊してやる…………!」