グローリ・ワーカ   第14章:ある占い師との約束

 シドゥスの町の宿にて。
 みんなで朝食を食べ終わり、ヤンは部屋へと戻ろうとしていたところをマニュアに引き止められた。
「ねぇ、ちょっとお願いなんだけど」
 珍しいことに(そうでもないか?)、どうやらマニュアから頼みごとのようだ。
「――でさ。まぁとにかく、いい? お願い!」
「……ま、いいけどよ。でも、約束だからな! 昨日なんかあいつに言うまですっかり忘れられてて。ま。とりあえず、約束守れよ!」
「わかってるって! じゃあ、いいのネ? サンキュー!!」
「絶対だぞ。大切なものなんだからな」
「今日中にならいーでしょ」
「まーな」
「え? なに? なんの話!?」
 2人が話しているところへ、アリスが割り込んできた。
「あ、アリちゃん……。いーのいーの。こっちの話だから」
「ヘイズルには関係ねーって」
「あ、じゃ、そーゆーことで! ありがとネ、ヤン!」
 マニュアは走ってその場を去っていってしまった。
「ねぇねぇ。なんの話をしてたの?」
 関係ないとは言われても……アリスはまだ気になっているようだ。
「そんなに気になるのか?」
 はっきり聞かれ、少し俯きながらも、
「え? あ……う、うん。まぁ……」
 そう返事をした。
「教えてほしい?」
「え!? う、うん!」
(からかわれてる!?)
 ヤンが少しいじわるそうに笑って言った言葉に、そう思いながらもまた頷いた。
 ヤンは満足そうに笑ってふぅっと溜め息を吐くと、答えた。
「別にたいしたことじゃねーぞ。なんかな、月水晶を貸してくれって言われただけだ」
「月水晶って……たしか、サンドの家の家宝だよね? あれ? そーいえば、ホワさんって月水晶のこと嫌がってなかったっけ?」
「そーなんだよな。俺もそれは不思議に思ったんだけどよ、どーしてもとかせがむから、今日中に返すことを約束に貸したんだ。なんたって、ピュウのやつに貸したときはすっかり忘れられててな。昨日、俺が言ってやっと返してもらったんだからなぁ」
 ヤンが説明をすると、アリスはほーっと安堵の表情を浮かべた。
「なんだ、そーだったの……?」
(ハァ……よかった。……って、よ、よかったってなに!?)
「あ、そ、それより! ホワさん、どこ行ったの!?」
 アリスが自分の考えをごまかすように慌てて言った。
「それは俺も知らねーんだけど……」
「単独行動させていいの!? また昨日みたいに1人でどっかに、なんて……。月水晶盗まれたりしないかな」
 アリス、なかなかひどい。
「え!? そ、それは……ヤベー!」
 ヤンまで……。仲間を信じろよ(汗)
「日ごろの行いですか」
 ア、アルト! いつの間にか2人の背後に……。
「うわぁ! アルト! ホワさん大丈夫かな!?」
「逃げたか!?」
「2人ともなにを突然……。よくわからないんだけど、大丈夫??」
「さぁ……?」
「だ、大丈夫か……?」