グローリ・ワーカ   第14章:ある占い師との約束

「実は、あなたと会うこと自体が予定外だった」
 まだ用があるというマリーナを置いて先に2人で占いの館に戻り、部屋にあった椅子へ腰をかけるとマニュアがそう呟いた。
「私が1つの未来を知っていることを、あなたは知っているんだよね」
 マリアにそう尋ねると、マリアが頷いた。
 それを確認して、続ける。
「私はアルトさんを助けに行って、ミリアと戦って――で、そのまま魔王とも戦うはずだった。……いや、魔王と戦ったんだ、前は」
 それはマニュアが母に力を借りて今をやり直す前の、未来を救えなかった時のことを思い出しながら……1つ1つゆっくりと言葉を発した。
「魔王と戦う前に、四天王と戦わされた。そして、その戦いで――」
 ――その先は、言葉が出なかった。それは、マニュアにとって思い出したくもない記憶だった。
「――今回は、逃げたんだ。また同じことを繰り返すのが怖かった。今回逃げる時に私だけが捕まった。まぁそれは私の足が遅いからなんだけど……。で、逃げたみんなに裏切られたと思った」
 深く溜め息を吐いて、マニュアの言葉が止まった。マリアはなにも言わずにマニュアを見ていた。
 しばらくして、マニュアは続きを話し始めた。
「1人――っていうか1匹? の仲間に助けてもらって逃げ出して、この町で仲間に再会して、そして――」
 マニュアはマリアの顔を見つめた。
「マリアちゃんに出会った」
(まだ昨日のことなんだ……。なんか1ヶ月近く経った気もしてたけど、更新日時的な意味で)
 マニュアが余計なことを思いながらも、昨夜のことに思いを馳せる。自分が占いから逃げ出してしまった場面を思い出して顔が赤くなった。
「あ、あの時は――裏切られたと思ってて、思考がついネガティブになっていて……。未来なんて変わらないと思った。また、滅びるだけなんだろうと。でも、でもね、マリアちゃんに出会ったんだよね。会わなかったはずのマリアちゃんとマリーナちゃんに。そして、空水晶の秘密を知った。――都合がいい考えなのかもしれないけど、もしかしたら、未来は変わるんじゃないかって……」
「知りたいの?」
 マリアが一言、そう言った。
 マニュアがはっとしてマリアを見る。マリアはまっすぐマニュアの目を見つめてくる。
「それは可能性の1つであって、必ず来るとは限らないよ」
 マリアが言うと、マニュアは首を振って、
「――だからこそ、聞きたい。それが本当に来る未来だとしたら、希望もなにも持って聞けないから」
 そう言って、マリアを見つめ返す。それからシザーバッグに入れた水晶をすべて取り出し、テーブルの上に置いた。
 マリアはゆっくりと占いのテーブルの前に座り直し、その中から、先ほど預けたばかりの星水晶を再び受け取った。
「未来を知る覚悟はできたのね」
「うん……。あのね――」