グローリ・ワーカ   第15章:再び魔王城へ

「魔王様――……。ミリアたちが2人ずつに分かれたようです……」
 魔王城の1室で、ミンミンがカメラ代わりの水晶玉を覗き込み、言った。
「そうか……。やっと来たか……」
 魔王がお茶を啜りながら言った。
「それにしても、このお茶はおいしいですね」
 トンヌラもお茶を啜り以下同文。
「そうだろうそうだろう。魔界一のポォションのお茶だぞ」
「道理で。ハァ、絶品ですねぇ……。ハイー……」
 魔王が嬉しそうに言うと、トンヌラもにこやかに答えた。
 そこに、ミンミンのツッコミ!
「なにをジジくさい会話してんのよおぉっ!!」
「あ、ミンミンもお茶飲むかい? とっても美味しいですよ」
 トンヌラが言う。
 しかし、ミンミンは負けちゃあいない!
「なに言ってんのよ! お茶はレプトンに決まってるでしょ!? レプトンが1番美味いのよっ!!」
「いーえっ!! ポォションです!」
「違うわよっ!! レプトンよっ!」
「ポォション!!」
「レプトン!!」
「ポォション!!!!」
「レプトン!!!!」
「いー加減にしなさ――――いっっ!!」
 怒鳴ったのはシリアだった。辺りが静まり返る。
「もぉっ!! ハァ、ハァ……」
「シ、シリア……」
 シリアは魔王城に1人残された間に、再び魔の心に侵されていた。――マニュアは、今はまだその真実を知らない。
「お父さん。なにか作戦は立ててあるの?」
 シリアが、その場に一緒にいた父に訊いた。
「そんなものは……ナイ!!」
 そう言った父の声は、ペンダントからしていたものと同じだ。
 まぁマニュアの妹であるシリアの父=マニュアの父なのだから、当たり前なのだが……。
「お、お父さぁん……!?」
 がっくりとして、シリアが声を上げた。
 父は笑って、
「はっはっは。冗談だ」
「…………。言っとくけど、あいつ――ミリアは強いわよ。力はなかったとしても、……仲間が……あいつには仲間がいる……。あいつにとって、仲間は……なによりも……どんなものよりも、強い……!」
 シリアは苦しそうに、下を向いて言葉を吐き出した。
「そっか……。だってさ、魔王」
 ――父……って……。父は軽い感じで魔王に言った……。
「そーだな……」
 父の言葉に、魔王はなにかを考えるように遠くを見た。
 あ。父と魔王は同一人物なんじゃ!? と思ってた人とかいたりするのだろうか。その人はハズレたね!!
「――……まぁ、だからこそ、これだけバラバラに行動させたのだがな。さぁ、トンヌラ、ミンミン、トリヤス、キリオミ! お前らが行くのだ!」
 魔王が四天王である4人に向かって命じた。
 4人は頭を垂れて一言頷いた。
「「「「はっ!」」」」
「やっとあたしの出番ね」
「久しぶりの出番です〜!」
「じゃあ行ってきますっス!」
 そうして、なんだかみんなうかれた気分で部屋を出て行った。今から起こる戦いに楽しさを感じているようだ。
 4人が部屋から出て行くのを見て、魔王も笑った。
「楽しくなりそうじゃないか……。なぁ、息子よ……」
「――……そうだね……。あの娘がどこまでやれるか見物だよ。そして……どれだけ僕の嫁にふさわしいかもね」