グローリ・ワーカ   第1章:出会い

「っていっても、まだ7人じゃないけどね!」
 いきなりのセリフ。これは『マニュア・ホワイト』。
 彼女は魔王を倒すためにたった1人旅に出た。背が低く、薄いグレーのショートカットヘアが特徴の、まだまだ幼い少女である。
「そんな幼くないよ! もう13歳だよ!!」
 っていうか、さっきから最初の語りの部分とかナレーションにツッコむなよ!!!!Σ
「この小説の見せ場の1つが、ナレーションである作者との語らいである!」
 んなアホな!!
「まぁまぁとにかく。今はまだ7人じゃなくて1人――いや、1人と1匹なのだよっ!」
 勝手にそう喚き、彼女は手の平に乗せたその『1匹』をよく見えるようにと(誰に向かって?)たかだかと掲げた。
「このコも一緒! ね、ピュウ」
「ピュウピュウ!」
『ピュウ』と呼ばれたその生き物は、黒い毛で覆われた丸い体に、ちょこんと覗く小さな猫のような耳。そして、細い尻尾の先には丸い毛玉。顔の真ん中につぶらな瞳と、茶色い鼻の横にはピンと張ったひげ。さらに、その真ん丸の体に、いったいどうやって着けているのか? 蝶ネクタイをしている。
 その手の平サイズの生き物は、かわいらしく鳴いた。
「このコね、この間、ラヌゴって町のペットショップで見つけたんだよ。今は、そこから次の町へ向かってるとこ」
「ピュウ! ピュ、ピュ、ピュウ!」
 けたたましく鳴くピュウに、耳を傾けるマニュア。そして、とつぜん驚愕の表情を見せた。
「な、なんだって……!! 酷い……!」
 え、なんだって? ていうか、ナゼにあなたにはピュウの喋ってる言葉がわかるの?
「それは私のピュウへの愛だよ〜」
 今度は悦った表情。
 ――で、そのピュウがなんだって?
「『作者にゴミ箱置き場に捨てられて、一時は保健所行きになって、殺されそうになったケド、走って逃げて、そんでもって、ペットショップのおじさんに拾われた』らしいよ! 酷い! 動物虐待だ!!」
 してねー!!!! 嘘をつくな、嘘を!

 そんなこんなでワイワイしているうちに、森が見えてきた。
「地図によると、この森を抜けると次の町――新しい国だね! エレクトロニカっていう国のティロとかいう町だよ! エレクトロニカに入るのかー」
 エレクトロニカとは大きく、工業で有名な国である。
 人が多いせいか自然と魔物も寄ってきて、日々の争いは耐えないという――
「うわー。新しい国、楽しみだなー」
 はしゃぐマニュア。……忘れてないか?
「? なにを?」
 君、今からそこに行くんだぞ? ってことは――
「――はっ! 忘れてた! ってことは……!」
 マニュア VS 魔物!!!!
「やだー!!」
 魔王を倒すために旅に出たくせに、なにを泣き言言ってるんだ!!
「うぅ……」

 そして、半べそで森へと踏み込むのであった……。