グローリ・ワーカ   第20章:最終決戦

「さっきの闇……。おまえ、四天王を消したのか?」
 魔王が義父に尋ねる。義父はゆっくり頷いた。
「そうか……。よくやった」
「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」
 義父に対してなにか文句でも言うのかと思いきや、魔王は少し笑いながら褒めた。驚くみんな。
 そんな驚きなど気にもせず、魔王は続けた。
「役立たずな部下などいらん。新しい四天王には――そうだな、実績がある者になってもらうか。元素が使えないのが少々残念だが」
 その時。
 プチッ。
 なにかが切れる音がした。その方向を見てみると――、
「――……魔王……、お義父さん……」
 ――マニュアが頭から血を噴き出しながら2人を睨み付けていた。どうやら、さっきの音はマニュアの血管の切れる音だったようだ。
「おぉっ、さすが! どこぞのマンガの世界だな」
「小説でしょ?」
 とうとうヤンとアリスの漫才が始まった。
「今回は最終決戦っていうより漫才対戦じゃね?」
「よし! 俺らもコンビ組むぞ!」
「コンビ名どうすっか?」
 ニールとストームもボケ始めた。
「すごい余裕だね」
 スリムはそんな2人を見て感心している。
「マニュちゃん……」
「こ、怖い……」
 アルトとティル、ヒナはマニュアを見て怯えている。
 ドスン、ドスン!
 派手な足音を立てながら、マニュアは魔王の前まで行くと、とても見せられないような形相で睨み付けた。
「ふっざけんな!! あんなに一生懸命戦ってくれただろ!!」
 そう怒鳴り散らす。魔王は――、
「別に給料も安くないし、一生懸命働くのは当たり前ではないか?」
 さらっと言った。
「…………別に、給料はどうでもいいのよ……」
 マニュアは戦意喪失といった感じだ。
 気を取り直して……。
「と、とにかく! おまえら、絶対、倒ーす!!」
 ビシッ!!
 人差し指を魔王の鼻先に付き付けて言った。こら! 人を指差すんじゃありません!
「オカンか!」
「ハンッ! そんなやつ、俺の魔法で軽くやっつけてやるわ」
 強気のヤン。その言葉にマニュアまで、
「そうだね。魔法で倒そうか」
 と同意した!?
 みんなの目が点になっている。
「へ……? ホワさん、サンドの魔法に期待してるの?」
 と、不思議そうにアリス。って、アリスまで――みんな、ヤンなんぞの魔法には期待していないようだった。
「オイッ!! どーゆーことだ! 俺結構活躍してるよな!? ていうか、『なんぞ』って……!!」
 というわけで。
「話をそらすなぁ!!」
「あ、そういえば。ヤン見て思い出した。そんな狼男がこの中でうろうろしてんのもなんか違和感だから、このマニュア様がなんとかしてあげるよ」
 本当に話がそれた。
 が、そういえばそうだった。ヤンはずっと狼の姿のままだった。
「どうにかできるの?」
 アリスがマニュアに尋ねる。マニュアは答えた。
「変身する呪法は、自分以外にもかけられるはず。やったことないけど……やるだけやってみようかと」
 そういえば、ずっと前にトリヤスが呪法でマニュアに化けたことがあった。そう、変身する呪法もあるのだから、それをかければ人間の姿を保てるはずだ。
 マニュアが変身の呪法を唱える。すると、ヤンの姿がみるみる変わっていく――というか、戻っていく。そして、呪法を唱え終えた時、そこにあった姿は――、
「………………おい。ちょっと、待て」
 ――狼耳&狼尻尾で他人間という、中途半端な状態のヤンだった。
「おいてめー! 本当に萌えキャラにすんじゃねー! 人気取られるじゃねーか!! サンドが人気とか俺は認めねーぞ!」
「ごふぅ!」
 マニュアをぶん殴りながら叫ぶストーム。
「……プッ…」
 他の人は、そんなヤンの姿を見て必死に笑いを堪えていた。
「萌えとかじゃねー! 笑われてんじゃねぇか!」
 ヤンも怒り気味である。
「そ、そんな……私は必死にやったんですけどね……」
 ストームに殴られ、口から血を垂らしながら言うマニュア。
「……かわいーっv」
 と、アリスはヤンを見て目を輝かせながら言った。
「え? そ、そうか……?」
 途端に顔を赤くするヤン。
「なんだよー! よかったじゃんかー!」
 もう回復したマニュアは憤慨しながら言った。
 みんなニヤニヤしながら2人を見つめる。
「って、俺は認めねーぞ! 全然よくねーよ!」
「ひでぶ!」
 再びストームに殴られるマニュアだった。
「ストームゥ〜……?」
 怒るストームを睨みつけるティル&アルト。なんだかもうしっちゃかめっちゃかだ。
「……だから、戦闘どうなってるんだ?」
 また放置される魔王と義父だった。