グローリ・ワーカ   第21章:思い出を胸に

 今や幻惑の声は消え、マニュアの声だけが響いていた。
「これからも旅を続けよう! もし迷ったり、悩むことがあっても……その答えは、これから見つけていけばいい! みんなで! みんなで一緒に……!」
「マー……!」
 みんながゆっくりと目を覚ました。
 惑わすものはもうなく、いつもの仲間たちがいる風景が映る。
「これからもみんなで旅を続けよう。今までみたいに、おもしろおかしく……さ……!」
 マニュアが涙を流しながら、そう言って笑った。
「マー……。私も、旅したい……!」
 ティルももらい泣きをして、そう言った。
「私も……。続けようよ、旅……! 魔王を倒して……」
「うん。世界を平和にして……また、旅しましょう……!」
 2人だけではない。みんな、泣き出してしまった。
「……それより、たしか時間ねーんだろ!」
 ストームがマニュアたちにそう声をかけた。ニールも、
「旅を続けたいなら、まずコイツを倒さねーとな」
「ストーム……、ニールゥ……」
 少ししゃくりあげながら、マニュアは顔を上げた。
「急がねーと、呪法で『じゅっほーん』(ちゅっどーん)とやられるぞ」
 ヤンがかなり無理やりなダジャレを言った。
 みんなを元気つけるためではあろうが――、
「いや、それはさすがにつまらんわ」
「おまえ、それはねーよ」
 ドン引かれるヤンだった。
「おい! そこは空気読んで笑えよ!」
「それは無理だわ」
「おい!」
 何にせよ、みんな涙は引っ込んだようだ。
「あぁ……まぁ、とにかく。倒しますか?」
「なんでテンション下がってんだよ!」
 ヤンは無視して、みんな立ち上がった。魔王を睨みつける。
「フン! 呪法が解けたくらい。……わかっているのか? 地守月はおまえらの力を上げるだけじゃないんだ。こっちの力、呪力も上がっているんだぞ」
 魔王が言う。
「わかってますよーだ! でも、私たちは、絶対負けない!!」
 マニュアは力強く言い放った。
 そして、今度はみんなの方へ向き直って言った。
「私たちの旅の目的は、魔王を倒すこと。今、それを果たす。でも、それで終わりじゃない。魔王を倒して世界が平和になったら、その世界でまた旅をしよう! 今度は、自由な旅を――」
 みんなを見回す。みんなも笑って、
「うん!」
「おう!」
 と、元気よく頷いた。
「よっし! やるぞ!」
 そうして、みんなで拳を前に突き出し、ぶつけた。結束を高めるように。
 それから再び魔王の方を振り返った。必ず魔王を倒すんだ――! そう決意を胸に。