グローリ・ワーカ   第22章:偶然じゃなくて必然

 しかし、喜んだのも束の間。
『フフフフフフ……』
 笑い声に振り返る。
 そこには、無傷の魔父がいた。
「なっ、なにィ……っ!? 魔父っ!? な、なぜ無事なんだっ!?」
 驚愕するマニュアに、魔父は高笑いしながら答えた。
『残念だったな! おまえらの攻撃方法は研究済みだ。おまえがマイクを構えた瞬間、私は耳栓をしたのだよ! ハッハッハッ!!』
 ガ――――ン……!!
「くそっ……!! 謀られた……!!」
 ガクッ!
 マニュアは精神に5000のダメージを受けた。
「こンの、アホ――――――――ッ!!」
 蘇ったニールが、半泣きでマニュアの頭をはたいた。
「え、えへへー。ご、ゴメンナサイー……」
「笑ってごまかすんじゃねぇ!!」
 ストームも当然の怒りを現す。
 と、そんなことをやっている間に!
『ペイン アゴニー キリング!』
 魔父が呪法を放ってきた。
「! オール・リフレクション!」
 ヒナが素早く、全員に呪法を跳ね返す魔法をかけた。あまり長くはもたないが、これで呪法による攻撃は効かなくなる。
 呪法が届くよりヒナの魔法の方が一足早く、魔父の呪法は跳ね返ってダメージを受けた。
『くっ……! こしゃくな!』
「てやぁぁ――――っ!!」
 その隙を逃さずスリムは駆け出した。一瞬で魔父の眼前まで迫り、横をすり抜けると同時に剣を勢いよく滑り込ませる。その剣は魔父の脇腹をためらいなく切り裂いた。
『グああぁぁぁぁ――――ッ!!!!』
 魔父の悲鳴が響き渡る。
「やった!?」
 スリムが笑顔で振り返る。と同時に、魔父の裏拳が力いっぱい背中から入った。
「ぐっ……!」
「「「スーちゃん!!!!」」」
「カント!!!!」
 激しく跳ね飛ばされるスリム。
 みんなが慌てて駆け寄る。
 口から血を吐き出しながらも、スリムはゆっくりと立ち上がった。
「大丈夫……」
 そんなスリムに、ヒナが急いで回復魔法をかけた。
『ぐぬぅ……! コケにしおって……! 貴様ら、絶対に許さんぞ!!!!』
 傷を押さえながら、魔父は怒り狂っている。どうやら深手を負わせることには成功したようだ。
((ていうか、スーちゃんつえぇー!!!!))
(実は、この2人の方が、うちらよりできる……!?)
((((グローリ・ワーカの立場ねぇっ!!!!))))
 ガ――ン……。
 ちょっと落ち込むグローリ・ワーカであった。