グローリ・ワーカ   第24章:そしてこれから

 とうとう、勇者グローリ・ワーカは人間界を乗っ取ろうと企んでいた魔王を倒し、人間界を魔の手から救うことに成功したのだった。
 ――が、しかし。
 ガサ……ゴソ……。
 なにか――誰かが、いる! みんなが身構えた時、それは姿を現した。
「……ん? あ……れ? 私、なんで…………」
「「「「「「シリア!?」」」」」」
 一体なんの奇跡だろうか? それはシリアだったのだ。
「なんだよ! おまえ、生きてたのか?」
 驚いてニールが声を上げた。
「え? そんなわけ――」
 自分でもなにがなんだか分かっていないシリアに、マニュアが静かに歩み寄った。
「――シリア…………」
「お、お姉ちゃん……」
 マニュアとシリアはゆっくりと向き合った。
 2人の表情は硬い。
「シリアが生きてるのは、きっと――それは、シリアが本当の娘だったから……」
 ふと、マニュアがそう口にした。なにかを堪えるように、苦しそうな表情で。
「え?」
「シリアが……お義父さんと血の繋がった本当の娘だから……。自分の娘がかわいくない親なんていないんだよ……。……お義父さんは……死ぬ前に、シリアを救ったんだ。復活の呪法で……。――大切な、自分の娘を…………」
 搾り出すようにそう言うマニュアを、シリアは不思議そうに見て言った。
「なに言ってるの? お姉ちゃんだって、お父さんの娘じゃん」
「シリア……実は、私は――」
 血が繋がっていないという真実。それを決死の表情で伝えようとしたマニュアを、シリアの言葉が遮った。
「お父さん、本当にお姉ちゃんのこと、好きだったんだよ。お父さんの部屋にはね、家族みんなの写真が飾ってあるの。お姉ちゃんの写真も飾ってあって、お姉ちゃんの行方が分からなかった頃は、毎日写真に向かってお姉ちゃんの名前を呼んでたこと、私、知ってるんだ。――お父さんには、酷いこともされたけど、そんなとこも知ってたから、恨み切れなかったなぁ――」
 苦笑を浮かべたシリアを、マニュアは思わず抱き締めていた。
「お、お姉ちゃ――!?」
「――……お……とう……さん……。ッ…………!」
 いろんな感情が涙となってとめどなく溢れてくる。
 シリアを力いっぱい抱き締めながら、マニュアは静かに涙した。
「お姉ちゃん……。――お父さん、倒したんだね……」
 シリアも多くの感情を抱えながら、その現実を口にする。
「……うん……。でも、シリアを助けてくれたよ」
 マニュアは涙に濡れた顔を上げ、シリアを抱く腕を1度離して彼女の目を見つめた。
 2人は穏やかにふっと笑った。
 間に、柔らかく温かな風が流れる。
「……お姉ちゃん……」
「……おかえり、シリア……」
「…………うん! お姉ちゃんも、おかえりなさい」
「うんっ!」
 今度は輝く笑顔を見せ、お互いにもう1度強く抱き合った。
 そして、心行くまで泣いた。
 温かな涙が、今まで会えなかった時間を埋めていく。そんな気がした。