グローリ・ワーカ   第9章:彼女の思惑

 黄金色に輝いたピュウの体はだんだんと姿を変えていき――。
「……ピ、ピュウ!?」
「ピュウがっ!?」
「り、竜に……!?」
 光が治まり、ピュウの姿は見事な黒竜へと変化していた。
「ピュウ、ピュ、ピュウゥ、ピッ!」
「訳『僕の種族は月の光でどんなものでも姿を変えることができるんだ!』」
 マニュアが通訳した。
「って、ホワさん、いつの間に!?」
「ていうか、どうやってロープとガムテープから……!?」
「細かいことは気にしないっ」
「細かくないと思うぞ」
「しかし、あれだな。ヤンは狼にしか変身できないけど、ピュウはなんでもOK! ピュウのが上だな!」
 マニュアが言う。
「…………火を司るサラマンダーよ……」
 ヤンが魔法を唱え始めた。
「うわーっ! ごめんなさいー!!!!」
 マニュアは逃げ出した!

 とりあえず、今は必要もなさそうなので、元の姿に戻ったピュウ。
「それより、おまえ、月水晶に怯えてたんじゃないのか」
「いや、まぁ、ちょっとね……。あまり今は月を見たくないってゆー……」
「どーゆーことだよ」
 ヤンが尋ねるが、マニュアは微妙な笑みを浮かべるだけだった。
「……ところで」
 ニールが立ち止まった。
「ん? どーしたの、ニール」
「――俺たち、どこに向かってるんだ?」
 …………。
「あ゛」
 おもわず間抜けな声を出すマニュア。
「えぇぇぇぇ――――――!!!!????」
「そういや、どこに向かってるんだ、俺らー!!」
「四天王に攫われたとすると――魔界??」
「どうやって行くんだよ!」
「ていうか、ピュウ変身した意味なかったじゃん!」
「意味ね――――――――っ!!!!」
 わーわーぎゃーぎゃー。
「あーもう。みなさん、静粛に、静粛に」
 マニュアが仕切る。
「おまえが仕切るな!」
 マニュア同様、実は仕切りたがりのヤンが言った。
 マニュアは怒鳴る。
「リーダーの言うことは聞けっ!!」
「「「「「「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――っ!!!!」」」」」」
 マニュア以外の全員が驚きの声を上げた。
「な、なんだよなんだよっ!」
「いつからマニュアちゃんがリーダーなのぉ!?」
 と、ティル。
「俺だ、俺!」
「嘘をつけっ!」
 ストームが挙手するのをヤンがツッコむ。
「なぜ分かった!?」
「分かるわ!」
「私が主役――じゃなくて、リーダーだぁぁぁぁ!!!!」
 どこへ向かうか。の話から、なぜか、誰がリーダーか。にすり替わっていた。
「よーし、こうなったら――」
「望む、ところだ!!」
 参戦せず遠巻きに見ていたシリア以外、全員の拳が同時に上げられ、いっきに振り下ろされる!

「じゃーんけーん――……!!!!」

 ――そして……。
「よっしゃぁぁぁぁー!」
「うをぉぉぉぉ!」
「負けたーっ!!」
 ガッツポーズをするマニュア。その後ろでは、ヤンやストームが悔しがっていた。
「私に決定ね! 私がリーダーだぁ!」
 じゃんけんに買ったマニュアは飛び跳ねながら言った。
「うー……。2番手……」
 最後の最後でマニュアとの一騎打ちに負けたティルは、ひときわ悔しそうな顔をしていた。
「まぁまぁ。ティルちゃんは副リーダーってことで」
「副……」
 マニュアの言葉にうなだれるティル。
「ていうか、リーダーの何がいいんですかね……。普通と何か違いますかね……?」
 シリアが呟いた。
「それに、私の仕切りは今に始まったことじゃないしね」
 マニュアが自分で言った。
「たしかにね……」
 みんな納得するのであった。
(((((でも、なんとなく頼りないリーダー……)))))
 心の底で思ったことを、誰も口にはしなかった。