グローリ・ワーカ   第9章:彼女の思惑

 気付けば、そこは荒れ果てた世界。
「……ここが、魔界……」
 上手いこと、降り立った先は魔王城が近くに見える場所だった。まっすぐと城を目指す。
 そして、いくぶんもかからぬうちに、一行は城へと辿り着いたのだった。
「みんな、こっち!」
 マニュアは素早く裏手に回り込み、城の裏口であろう場所を開いた。
「よ、よく知ってるね……」
 驚くアリスに、マニュアは笑うだけだった。
 そうして、一行は静かに城へと侵入した。
 裏口の扉の近くの上空を、虫の姿をした1匹の小さな魔物が飛んでいたとも知らず、まったく気付かれていないと思いながら――。

 裏口から入ると、調理場であろうか? 大きな鍋や見たこともない塊がある部屋を通り、狭い道を1列で進んで行った。
「少し行ったところに、地下へと続く階段があるんだ。たぶん、囚われてるとしたら、地下の牢だろう――」
 そう言って、振り向いたマニュアはすぐ後ろにいるシリアと一瞬目があった。その後ろには、アリス、ティル、ヤン、ニール、ストームと続いている。――そのはずだった。
「あれ?」
 マニュアが頓狂な声を上げる。
「――ニールは?」
 マニュアの言葉に、みんな一斉に後ろを振り向く。
 そこには、いるはずのニール。そして、ストームまでもが姿を消していた。
「ストームもいない!」
「え? 迷子?」
「トイレじゃねーの?」
「実は裏口で見張りしてるとか……」
 みんな、内心焦りつつも、そうであってほしいと願いを込めて言っていた。
「で、待つ?」
「うーん……」
 しかし、戻ってくるとも聞いていない。待っていてもしょうがないかもしれない。
「俺が戻って見てくる。ゆっくり進んでてくれ。すぐ追いつく」
 そう言って、ヤンは元来た道を戻っていった。その言葉を信じ、女4人はゆっくりと進んでいく。
「ねぇ……女だけだと、怖いよね……」
「だ、大丈夫だよ! それに、サンドもすぐ戻ってくるって言ってたし!」
 不安がるアリスに、ティルは元気良く言った。
 しかし、不安は的中。
 ヤンが戻ってこないばかりか、気付けばティルもいなくなっていた。
「……なんで……!? さっきまで、お話してたのに……!」
 アリスは恐怖の限界だった。その場にしゃがみ込んで、ただただ震えている。
 そんな怯えるアリスを見て、マニュアは立ち止まり、言った。
「大丈夫。簡単に解決する方法が――」
「『解決する方法』……?」
 アリスが顔を上げる。
 マニュアはにっこりと笑うと、
「――オラオラオラァーッ!! ニールたちをどこへやったぁ!? 吐け、作者ぁーっ!!」
 って、こっちに言うんかーい!!!!
「うん。さっさと言え!」
 あのさーいっつもこっちに言うけどさー。物語としてそれはどうかと思うよ。作者がナレーションしてるからってすぐ頼りにしてたら成長できないからね! と、口を尖らせて言う作者でした。
「……けっ」
 悪態をつくマニュアだった。
「ホワさん……」
 いまだ不安そうな表情のアリス。
 マニュアは言う。
「……大丈夫だよ。ほら、私やアリちゃんだけじゃない。シリアやピュウもいるしね!」
「はい!」
「ピュウピュウ!」
 シリアも、シザーバッグから顔を出したピュウも、元気良く頷いた。
「――うん」
 アリスも少しだけ元気を出して、立ち上がった。

 もう、長い夜は始まっていた。