「疲れた……」
 帰ってきて開口一番、そう呟いてベッドへと倒れ込んだ。





  イビツな僕ノ日常





 世界が歪む。
 元々歪んでいる。
 僕の世界はどこか歪だった。
「僕自身が歪だから」
 目を閉じた。膝を抱えた。耳を塞いだ。
 蹲って、声を殺して叫んだ。
 最初から何もなかったんだ、きっと。
 そう言い聞かせて、諦めていた。
「違う」
 本当は、わかっていた。
 全ての手を跳ね除けてきたのは、僕だ。
 今更手を伸ばしたところで、きっと届かない。そう決め付ける。
 それでいいんだ。
 人間関係なんて煩わしさもなくなったから。味方もいないけれど。
「虫が良いんだ、そんなの」
 だから、絶対に、僕は誰にも助けを求めない。
 これから先、立ち塞がるものがあっても、僕だけの力でどうにかしてみせる。
 誰かといるのは、怖いから。
「なんで?」
 そう尋ねる心の声も。
「大丈夫だよ」
 本当は気付いてることも。
 全て全て、聞こえないフリをする。
 そうしてどこまでも、後戻りできなくなる。
「怖いんだ」
 目を見れない。全てを見透かされる気がして。
 上手く喋れない。誰かを傷付ける気がして。
 笑い声が怖い。自分が笑われている気がして。
 だから、僕はひとりなんだ。
「泣きたい」
 せめて、自分を哀れんでもいいだろう。
 けれど、涙の流し方すら忘れてしまった。
「あの頃に戻りたい」
 幼い頃の夢も、いつの間にか忘れていた。
 大人になったとか、歳を重ねたなんて綺麗なものでもなく――歳を取って、現実を少しずつ知って消えてしまった。
 知りたくもないことが、傷のように痕を残していく。
「死ぬ勇気もないくせに」
 ただ、深い海に溺れていく感覚が、身を纏って消えない。
 そのまま溶けて消えてしまえれば、とても楽なのに。

 誰か――

 時間は待ってくれなくて、気付いたら朝で、また僕だけの戦いが始まる。
 僕の世界は歪で、僕はたったひとりだけ。周りは全て顔もない、名前もない誰か。
 本当は敵なんていなかったとしても、僕は永遠にもがいて生きるのだろう。
 朝日が目に染みて、痛かった。




 雰囲気短編ですので、こう……感じてください。
 暗いの書いたのは、仕事がまた始まるせいだと思われる←
 あぁ、でも、いつも通りの内容ですね。うぬぬ。
 そして、1度書き上げてから追加したりタイトル変えたり変えたり修正したとこでアップ。


――――2013/01/08 川柳えむ