グローリ・ワーカ 第23章:全ての祈り
それは一瞬の出来事だった。
ピュウの体が光に包まれ、周囲がその光に覆われた。
瞬きを終えた瞬間にはもうその光は消えていて、そして、光に眩んだ目が見えるようになった時、そこに見慣れたピュウの姿はなかった。
「ピュウ……?」
「え? あれ、ピュウなの?」
そこにいたのは全くの別の生き物――というか人物で、もっと正しく言えば、人ではなく獣人のように見える。
『……なに? あれは、一体……。……ま、まさか……!?』
魔父も驚愕の表情を浮かべている。
ピュウに気を取られて、攻撃をする手も止んだ。
「た、助かった……」
「それにしても……あれがピュウ?」
「ピュウ……月の光で変身したの?」
ティルが呟く。
ピュウは月の光で変身することができる。実際、何度も魔族の姿に変身したりしていた。
が、ティルの言葉にマニュアが答えたのは、
「いや、違うよ。たしかに、地守月の光の影響もあるのかもしれないけど――あれが、ピュウの本来の姿なんだよ」
「ピュウの!?」
「本来の姿って、どういうことだ!?」
みんなが驚いて声を上げる。
魔父は、誰に言うでもなく、呆然と呟いた。
『……あいつが……幻の毛玉族なのか……!?』
「あ? 毛玉族ってなんだ?」
魔父の言った聞き慣れない言葉に、ニールが問う。
それにマニュアが、少し考えてから答えた。
「……まぁ、知らないか。じゃあ、説明しましょーか。毛玉族っていうのはね、神界に棲んでいてもおかしくない種族なの。つまり、神のような力を持っているんだ」
「かっ……神様ァ!?」
その言葉に驚いて、思わず変な声を上げるアリス。
マニュアは苦笑しつつ、
「正確に言えば、神に近い生物ね。そんな生き物がなぜ人間界に棲んでいるかはわからないんだけど」
「ていうか、神のような力って、一体どんなんなんだ!?」
「で、この後、ピュウはどうなるんだよ?」
ストームとニールの質問に、マニュアは――
「……さぁ! 魔父がピュウに気を取られている間に倒すぞ!」
「……知らないんだな……」
ごまかすマニュアに呆れるニールだった。
「だ、だって~! 私だって毛玉族のことは本で読んだだけで、そこまで深いことはわからないよ~」
「言い訳だぞ、それ」
なんだかほのぼのだなぁ――と、そんなやり取りをしていた、その時!
『くそっ! 厄介な魔法でも使われる前に、殺してやるっ!! オーメン オー マレフィセンス デス キリング エクスティンクション!!』
魔父がピュウに向かって強力な殺傷呪法を繰り出した!
「あっ! 危ない! ピュウ!!」
「ピュウ――ッ!!」
マニュアやティルが叫び声を上げる。
が、それを特にうろたえもせず。ピュウはスッと手を前に伸ばしたかと思うと、
「…………殺傷呪法か……」
と、一言だけ小さく呟き、そして次の瞬間には、
シュン!
「えっ?」
「えぇ!?」
「あっ……?」
『なにぃ!?』
魔父の繰り出した呪法は消えていた。ピュウが伸ばした手に届こうかというところで、跡形もなく消えてしまった。
「……こんなもので、僕が倒せると思っているのか?」
ピュウが静かにそう言った。
『くっ……くそ! 神の力を持つと言われるだけあるな……。しかし、私は負けん!』
「次は、僕の番だな」
そう呟くと、ピュウは、手のひらから白く輝く光の塊を作り出した。
そして、それを魔父に向かって思い切りぶつけた!
ドォン!!
『ぐわっ!!』
轟音と叫び声が響く。
「……これくらいでは死にはしないだろう? 止めを刺すのは僕の仕事ではない」
ピュウはみんな――グローリ・ワーカの方へ振り返った。そして、言葉を続ける。
「後は、おまえたちに任せたぞ。勇者グローリ・ワーカよ」
「は……ハイッ!!」
力強く頷き、マニュアはみんなの顔を見回した。
「それじゃあ、みんな! 行くよっ!」
「頑張ろーねっ!」
「勇者に任せろっ!」
「えっ!? もう最後なの!?」
「やってやるぜーっ!!」
「きっと勝ちましょう!」
「えっと、マジメにやった方がいいよな? つーか、結局どんな魔法なんだ? 俺たちだけの魔法って」
わいわいがやがや。
勇者たちはどぎまぎしている。
魔父はダメージを受けつつも、ゆっくりと起き上がった。
それは一瞬の出来事だった。
ピュウの体が光に包まれ、周囲がその光に覆われた。
瞬きを終えた瞬間にはもうその光は消えていて、そして、光に眩んだ目が見えるようになった時、そこに見慣れたピュウの姿はなかった。
「ピュウ……?」
「え? あれ、ピュウなの?」
そこにいたのは全くの別の生き物――というか人物で、もっと正しく言えば、人ではなく獣人のように見える。
『……なに? あれは、一体……。……ま、まさか……!?』
魔父も驚愕の表情を浮かべている。
ピュウに気を取られて、攻撃をする手も止んだ。
「た、助かった……」
「それにしても……あれがピュウ?」
「ピュウ……月の光で変身したの?」
ティルが呟く。
ピュウは月の光で変身することができる。実際、何度も魔族の姿に変身したりしていた。
が、ティルの言葉にマニュアが答えたのは、
「いや、違うよ。たしかに、地守月の光の影響もあるのかもしれないけど――あれが、ピュウの本来の姿なんだよ」
「ピュウの!?」
「本来の姿って、どういうことだ!?」
みんなが驚いて声を上げる。
魔父は、誰に言うでもなく、呆然と呟いた。
『……あいつが……幻の毛玉族なのか……!?』
「あ? 毛玉族ってなんだ?」
魔父の言った聞き慣れない言葉に、ニールが問う。
それにマニュアが、少し考えてから答えた。
「……まぁ、知らないか。じゃあ、説明しましょーか。毛玉族っていうのはね、神界に棲んでいてもおかしくない種族なの。つまり、神のような力を持っているんだ」
「かっ……神様ァ!?」
その言葉に驚いて、思わず変な声を上げるアリス。
マニュアは苦笑しつつ、
「正確に言えば、神に近い生物ね。そんな生き物がなぜ人間界に棲んでいるかはわからないんだけど」
「ていうか、神のような力って、一体どんなんなんだ!?」
「で、この後、ピュウはどうなるんだよ?」
ストームとニールの質問に、マニュアは――
「……さぁ! 魔父がピュウに気を取られている間に倒すぞ!」
「……知らないんだな……」
ごまかすマニュアに呆れるニールだった。
「だ、だって~! 私だって毛玉族のことは本で読んだだけで、そこまで深いことはわからないよ~」
「言い訳だぞ、それ」
なんだかほのぼのだなぁ――と、そんなやり取りをしていた、その時!
『くそっ! 厄介な魔法でも使われる前に、殺してやるっ!! オーメン オー マレフィセンス デス キリング エクスティンクション!!』
魔父がピュウに向かって強力な殺傷呪法を繰り出した!
「あっ! 危ない! ピュウ!!」
「ピュウ――ッ!!」
マニュアやティルが叫び声を上げる。
が、それを特にうろたえもせず。ピュウはスッと手を前に伸ばしたかと思うと、
「…………殺傷呪法か……」
と、一言だけ小さく呟き、そして次の瞬間には、
シュン!
「えっ?」
「えぇ!?」
「あっ……?」
『なにぃ!?』
魔父の繰り出した呪法は消えていた。ピュウが伸ばした手に届こうかというところで、跡形もなく消えてしまった。
「……こんなもので、僕が倒せると思っているのか?」
ピュウが静かにそう言った。
『くっ……くそ! 神の力を持つと言われるだけあるな……。しかし、私は負けん!』
「次は、僕の番だな」
そう呟くと、ピュウは、手のひらから白く輝く光の塊を作り出した。
そして、それを魔父に向かって思い切りぶつけた!
ドォン!!
『ぐわっ!!』
轟音と叫び声が響く。
「……これくらいでは死にはしないだろう? 止めを刺すのは僕の仕事ではない」
ピュウはみんな――グローリ・ワーカの方へ振り返った。そして、言葉を続ける。
「後は、おまえたちに任せたぞ。勇者グローリ・ワーカよ」
「は……ハイッ!!」
力強く頷き、マニュアはみんなの顔を見回した。
「それじゃあ、みんな! 行くよっ!」
「頑張ろーねっ!」
「勇者に任せろっ!」
「えっ!? もう最後なの!?」
「やってやるぜーっ!!」
「きっと勝ちましょう!」
「えっと、マジメにやった方がいいよな? つーか、結局どんな魔法なんだ? 俺たちだけの魔法って」
わいわいがやがや。
勇者たちはどぎまぎしている。
魔父はダメージを受けつつも、ゆっくりと起き上がった。