神様の望んだセカイ Chapter01:なんてくだらない世界
この世界は私が生まれた時に始まり、私が死んだ時に終わるのだ――。
――この世の中は、なんてくだらないのだろう。と思う。
ある中学校。放課後の教室、窓の外の曇り空から僅かに薄い光が差し込んだその先には、4人の女の子。1人を囲うようにして、他3人が立っていた。
「マジでさー気持ち悪いんだけど」
3人のうち1人の女子がそう笑いながら言って、中心に立っていた女子を蹴り飛ばした。蹴られた女子は、バランスを崩して座り込む。
「学校来てんじゃねーよカス」
「死ねよ」
「なんか言えよ。マジ気持ちわりーし」
追い討ちをかけるように他の女子も蹴り出す。
蹴られている子は耐えているのか、何も答えなかった。
「あーウゼー。もういいや。帰ろー」
「駅前でアイス買ってこうぜー」
そんなことを言いながら、今度はその女子の鞄から勝手に財布を取り出すといくらかお札を抜き出す。
「行こーぜ」
そうして、財布を投げ捨てると、きゃははと声を上げて3人は行ってしまった。
蹴られていた女子は無言でそれを拾うと、静かに立ち上がった。
黒く長い髪の間から覗いた目が、その様子を教室のドアの外から見ていた男子のものと合った。
「あ……」
なんとなく「まずい」と思った男子がなにか言おうとするが、女子はすぐさま目を逸らすと財布を鞄に押し込み、そそくさと教室を出て行ってしまった。
本当に、なんてくだらないのだろう。
現場に残された『片井 京太(かたい けいた)』は思った。
くだらない世界だ。くだらない日常が過ぎ去っていく。くだらない人間がのさばって、そして世界は更に闇で広がっていく。少しでも隙を見せようものなら、こうして、誰かの餌食にされる。
だからといって、それを助けようとは微塵も思わない。たいした力もない人間がそれを救おうだなんて、大それたこと。
第一、あんな状況で助けようものなら、今度はターゲットが自分に移るだけ。誰だって、巻き込まれて痛い思いなどしたくない。
そんなふうに、くだらない出来事を見つけてしまったところですべてに無関心を決め込む。自分もまた、くだらない。
京太は帰路を歩きながら、車が撒き散らす排気ガスを吸わないように、高いビルの隙間から見えるどんよりと曇った空を仰いだ。
――くだらない。つまらない。この世界は、なんて不要――。
「終わってしまえばいいのにな」
誰に言うでもなく、小さくつぶやいた。
お金もない。景気も悪い。就職率も年々悪化して今や50%を切った。政治家も口先ばかりで何か起これば責任逃れをしようと必死。諸外国からは狙われてこの国自体がなくなってしまうのもそう遠くない未来なのかもしれない。
危険な状況はこの国だけではない。戦争が始まっている国もある。世界情勢も緊迫している。安全な場所などない。更に最近は世界中で天災も多い。
もうどこへも逃げ場はなかった。世界は、終末へと向かっているのかもしれない。
でも、もうそれでいい。こんな世界、終わってしまえばいい。
「別に、生きていたくもないし」
そんなことを考えているうちに、学校の最寄駅に着いた。ここから電車に乗って帰宅する。
駅前のアイスクリームショップから、先ほどの3人が出てくるのが見えた。彼女から奪ったお金でアイスを買ったのだろう。
それを見て、またなんとも言えない胸糞が悪い気持ちになる。
――終われ。世界よ、終わってしまえ。
そう、心に強く思った瞬間だった。
少なくとも、彼の見ていた世界は一瞬にして崩れていった。
突然、世界に終末が訪れた。
この世界は私が生まれた時に始まり、私が死んだ時に終わるのだ――。
――この世の中は、なんてくだらないのだろう。と思う。
ある中学校。放課後の教室、窓の外の曇り空から僅かに薄い光が差し込んだその先には、4人の女の子。1人を囲うようにして、他3人が立っていた。
「マジでさー気持ち悪いんだけど」
3人のうち1人の女子がそう笑いながら言って、中心に立っていた女子を蹴り飛ばした。蹴られた女子は、バランスを崩して座り込む。
「学校来てんじゃねーよカス」
「死ねよ」
「なんか言えよ。マジ気持ちわりーし」
追い討ちをかけるように他の女子も蹴り出す。
蹴られている子は耐えているのか、何も答えなかった。
「あーウゼー。もういいや。帰ろー」
「駅前でアイス買ってこうぜー」
そんなことを言いながら、今度はその女子の鞄から勝手に財布を取り出すといくらかお札を抜き出す。
「行こーぜ」
そうして、財布を投げ捨てると、きゃははと声を上げて3人は行ってしまった。
蹴られていた女子は無言でそれを拾うと、静かに立ち上がった。
黒く長い髪の間から覗いた目が、その様子を教室のドアの外から見ていた男子のものと合った。
「あ……」
なんとなく「まずい」と思った男子がなにか言おうとするが、女子はすぐさま目を逸らすと財布を鞄に押し込み、そそくさと教室を出て行ってしまった。
本当に、なんてくだらないのだろう。
現場に残された『片井 京太(かたい けいた)』は思った。
くだらない世界だ。くだらない日常が過ぎ去っていく。くだらない人間がのさばって、そして世界は更に闇で広がっていく。少しでも隙を見せようものなら、こうして、誰かの餌食にされる。
だからといって、それを助けようとは微塵も思わない。たいした力もない人間がそれを救おうだなんて、大それたこと。
第一、あんな状況で助けようものなら、今度はターゲットが自分に移るだけ。誰だって、巻き込まれて痛い思いなどしたくない。
そんなふうに、くだらない出来事を見つけてしまったところですべてに無関心を決め込む。自分もまた、くだらない。
京太は帰路を歩きながら、車が撒き散らす排気ガスを吸わないように、高いビルの隙間から見えるどんよりと曇った空を仰いだ。
――くだらない。つまらない。この世界は、なんて不要――。
「終わってしまえばいいのにな」
誰に言うでもなく、小さくつぶやいた。
お金もない。景気も悪い。就職率も年々悪化して今や50%を切った。政治家も口先ばかりで何か起これば責任逃れをしようと必死。諸外国からは狙われてこの国自体がなくなってしまうのもそう遠くない未来なのかもしれない。
危険な状況はこの国だけではない。戦争が始まっている国もある。世界情勢も緊迫している。安全な場所などない。更に最近は世界中で天災も多い。
もうどこへも逃げ場はなかった。世界は、終末へと向かっているのかもしれない。
でも、もうそれでいい。こんな世界、終わってしまえばいい。
「別に、生きていたくもないし」
そんなことを考えているうちに、学校の最寄駅に着いた。ここから電車に乗って帰宅する。
駅前のアイスクリームショップから、先ほどの3人が出てくるのが見えた。彼女から奪ったお金でアイスを買ったのだろう。
それを見て、またなんとも言えない胸糞が悪い気持ちになる。
――終われ。世界よ、終わってしまえ。
そう、心に強く思った瞬間だった。
少なくとも、彼の見ていた世界は一瞬にして崩れていった。
突然、世界に終末が訪れた。