親愛なるあなたへ――





  猫は宇宙へ行った





 ゆらゆらとふわふわと。
 上手く進まない足。おかしいな。
 体が軽くなって、いつもの庭を飛び出して、遠くまで駆け出した。
 青空からその先の向こうへ。
 だんだんと体が上手く動かせなくなっていく。
 やあやあ、そうか。
 私は気付いた。
 これが、世に聞く――“宇宙”。
 ――聞こえますか? こちら、宇宙猫C号。
 宇宙はすごい。広い。なかなか前へ進めないことだけが難点だ。
 ずいぶんと前に聞いたことがある。人間はなんだか重そうな格好をしないと宇宙にいられないと。
 それに比べて、私はすごい。
 そのまま、のろのろとすいすいと。
 ゆっくりだけど、いつもの姿で進んでいく。
 そうやって進んでいったら、隣の星に着きました。
 衛星『月』。
 ――地球の皆さん、どうしてますか? こちらからは、鏡の向こうで見た青い青いまあるい目のような、キレイな星が見えます。
 とても体が軽いです。飛び跳ねたらどこまでも飛べそうな。
 月をぐるぐる回りながら、その昔、人間が降り立ったとかいう噂に聞いた場所はここかな? そんなことを考えながら。
 月面散歩に飽きたら、月をまた離れて、今度はどこへ行こうかと、考える。
 うん、どこまでも行けそうな気がしてる。
 振り返って見下ろした先には、青い星。
 私は今から長い長い旅に出る。いつかきっと帰ってくるから。
 その時まで、――ばいばいさようなら。




 猫は虹の橋を越えて遠くまで旅に出ました。


――――2016/10/14 川柳えむ