僕の生存日記   第11話:ハート・クリーンロッカー

 僕は『川野辺 葉乃』――って、毎ページ毎ページ入れてたこの紹介文。今更ながらもういらないかなって思ってるんだけど。いらないよね?
 というわけで、今後は省略します。

 抵抗するのは諦めて、僕らはどこへ合宿に行くかを話し合った。
「俺の知り合いに、寺のヤツがいるんだが、そこはどうだ?」
「なんだよ、それ。それよりも海だな!」
「ここにある科学館には、いろんなロボットが展示されてるんだ。ここがいいと思います」
 僕は、正直どこでも良かったのでただみんなの話し合いを聞いていた。主に3人だが。
 黒井さんも、ぽつりと、
「夜に肝試しができるならどこでもいいです。あ、でも、心霊スポットが近くにある場所だと楽しいですね〜」
 と1つ意見を出していた。なんていう意見出してるんだ。

 結局、話はまとまらず、少し休憩を挟もうということになった。

「葉乃〜! ここがいいよな、やっぱり!」
「いや、別に、僕はロボットにそんな興味ないし……」
 擦り寄ってくる千羽に、僕は正直にそう返した。
「なんだよー! まぁ、そりゃ、俺も葉乃さえいれば、どこでも楽しいけど!」
 うーん。なんていうか、めげないなぁ。見習ってもいいかもしれないくらい、めげない。
 それよりも、僕は、黒井さんと話したかった。
 黒井さんはそのまま椅子に座って本を読んでいた。表紙から察するに、まぁ、夏の夜向けな、おどろおどろしい感じの本だろう。
 神成先輩と今池君は飲み物を買いに行ったり、息抜きにどこか行ってしまった。
 今、この教室にいるのは僕ら3人だけ。千羽がいなくなれば、黒井さんと2人で話ができるのに……!
 でも、話しかけるっていっても、何を話せばいいんだろう。2人きりだと、気まずくなりそうな気もしてきた。あれ? 今まで、僕はどうやって話かけてたんだっけ?
 そんなことが頭の中をぐるぐると巡る。
 どうしよう。これなら、このまま2人きりになんてならないで、千羽と話している方がよっぽど楽かもしれない。

「あー。ちょっと俺、飲み物買ってくるわ。愛しの葉乃の分も買ってきてやるよ」

 突然、千羽がそんなことを言い出した。
「千羽!?」
「頑張れよー」
 僕に背を向け、ひらひらと手を振りながら千羽は教室を出て行ってしまった。

 一体、どうしたんだ!!!!???? あの千羽が!!!!???? 僕と黒井さんを2人きりにするとか!!!!???? 明日は本気で槍が降るかもしれない。

 もしかしたら、この前の本気で怒ったこと。千羽はしっかりと受け止めてくれたのか。
 しかし、邪魔しないだけではなく、僕のことを考えて行動してくれるのか……。なんだかんだ言っても、僕らは幼馴染で、親友なんだな。
 ありがとう、千羽。
 だったら、僕は――


「黒井さん」
「ふぇっ!?」
 そうして僕は、黒井さんにとうとう話しかけたのだ。