エンタメクラブ   Act.1:着ぐるみ、現る

 ――なんだかなぁ……。
 茜さん(なんだかあのあと気を遣わせてしまった。申し訳ない……)と別れ、家に着くと、私はすぐさま自分の部屋へ駆け込みベッドにダイブした。
 ――大人気なかったかな……私……(とは言っても、大人というほど大人って年齢でもないし、そもそも着ぐるみ理事長のほうが年上だけれども)。
 しかし、あんなに怒る必要もなかっただろうか。彼女は……そーゆー人だから。そう納得すべきだったのだろうか。
 ――『納得』というのも変か?
「イヤ、そーじゃないのか……?」
 私はベッドから立ち上がった。
 ――『あなたのことを考えての行動を……!』
 着ぐるみ理事長は、そう叫んでいた。
 ――そうか、そーゆーことか。
「……じゅうぶん素直な行動だったと思うよ、私は……」
『素直になれ』と着ぐるみ理事長は言っていたが、私はやきもちを焼いた。……そんなすぐに、素直に告白なんて絶対にできないけど、でも、やきもちを焼いた。それが、今の私の素直な行動。
 あの人が、森にあんなことをしていたのも、私を素直にさせるため……。
 おかげで、いちおう素直な行動は取れた。
 ――しかし……やっぱりムカツクわ!!
 わかっちゃいるけど、でも許せね――――ッッ!!
 ――でも、ま、明日は謝ってみてもいいかもしれない。私が今考えていたことと共に。

「……にしても、森に変に思われなかったかな……?」
 はっきり言って、森はものすんごく鈍感である。
 彼の場合、私の行動を見て変だと思ったとしても、絶対に自分関係だとは気付かないだろう。
 いや、それ以前の問題で、たぶんなにも気付かなかっただろうな。私が嫉妬していたことにも気付かず、なにも感じなかったに違いない。
 ――それはそれで複雑な気持だ。……まあいいけど。
 私は、再びベッドに寝転がった。
「……森は私のこと、なんとも思っていないんだなぁ……」
 そう呟いて、私はゆっくりと目を閉じた。

 それから1時間後。私は家の外にいた。
 犬――『ガム』っていう名前の、おバカだけどかわいいオス犬――の散歩に行くようにと、母親に命じられたからだ。
「はぁー。もうこんなに暗いよ……」
 時刻は夜7時。
 だんだんと日は長くなってきたものの、この時刻になると、もうすっかり辺りは暗くなってしまうし、まだまだ寒い。
 だから、上着を羽織って外に出た。
 しかし、犬と歩いている――というよりも、走らされているうちにだんだんと暑くなってくる。
 上着を脱いでいたそのとき、犬の鎖を持っていた手が緩んでしまった。
 そして、その隙を狙っていたのか。同時にガムが逃げ出した!
「あ――――っ!? こ、こらぁ!! ガム!!」
 慌てて追いかける私!
 しかし、「捕まらないゼ」と言っているかのように、私のほうを振り返ってはダッシュを続けるガム。
 ――い、いったいどこまで行く気なんだよーぅ!