グローリ・ワーカ   第8章:攫われた仲間

 建物の屋根の上で、高笑いを続けるキリオミ。
 その腕には、気を失ったままのティルとアルトがいた。
「アルト〜ッ!! くっそー! キリオミ――だっけな――のやつぅ〜っ!」
「ティルッ! こんにゃろー!」
 ストームやニールが喚く。
 ストームは、はっと思いつき、
「そっ、そうだ! 剣3本一気投げ!!」
 そう叫ぶと、ナイフを上着から3本ほど取り出し、いっきに投げた!
 ――しかし、ナイフはキリオミの腕を少しかすっただけだった。
「くっそぉぉぉ〜〜っ!! 高さがあるせいで上手くいかん! ニー! ヤン! なんとか……!」
 ストームがニールとヤンの方へ振り向く。そして、ストームは驚いた。
「ニッ、ニールッ!?」
「はぁ〜〜〜〜っ!」
 ニールが何をしていたのか!? それは――!
「緊迫の9章へと続くっっ!!!!」
 マニュアー! 何言ってんだっ! まだページじゅうぶんあるっっ!! しかも、まだ始まったばかりだっっ!!
「さ、さいですか……」
 さいですよ!
 それは――(続き)手に拳を作っていたのだ! 驚くべきところはそこではなく、その拳が光っていることにあった。いや、拳だけじゃない。ニールの周りの空気が青白く光っていたのだ。そして、その光はだんだんと赤に変わっていった。
 ニールはキッと顔を上げると、拳をキリオミの方に勢い良く向けて叫んだ!
「爆風拳!!」
 その掛け声と共に、ニールの周りにあった光は一直線にキリオミにぶつかった!
「うわあぁぁぁぁッッ!?」
「「ナイス!!」」
 光が消える。
 キリオミはボロボロだったが、2人は全くの無傷だ。
 ポロッ……。
 キリオミの右腕から、ティルが落ちた。
「「「ティルッッ!!!!」」」
「ティル――――ッ!!」
「だめっ!! 間に合わな――っ!!??」
 ニールが目にも留まらぬ速さでティルの真下へと向かった。
 ドスッ!
「ティルちゃ――!! ……!? ニール!!」
 間一髪。ニールはティルを抱きかかえていた。
「ニールゥッ!!」
「ティーちゃん!」
「ティル! ニー!」
 ストームはティルの無事な姿を確認したあと、
「クラ――ッッ!! なぜアルトを助けんっっ!? それとも、ティルだけ無事ならいいのかっ!? なぁ、アルト、助けてくれよ。頼むよ、ニー!!」
「別にオレンジを助けようとしたわけじゃ……。分かったよ! もう1度! 爆風拳っ!」
 ニールは再度キリオミに向けて爆風拳を放とうとした。――が。
「え?」
「あら?」
 しかし、何も起こらなかった。
「ニ〜ィ〜〜〜〜……」
 ストームが殺気立てて近寄ってくる。
「わわっっ!! んな、んなこと言われてもっ!! ――出ねーんだよ。おっかしーなー」
「ナニぃっ!? なんだとーっ!? なんでだよ――!? 作者っ! どーゆーこったい! 説明しろよぉー!」
 こっちに聞くなよ。どうせ、あれじゃん? 魔法付加してたっぽいし、魔力切れたんじゃん?
「そんな普通のつまんねー回答すんなよ」
 んじゃぁ、ニールの場合は、ティルちゃんへの愛があったからできたんだよ! これで満足か!?
「アホッッ!! 満足じゃねーよ! んなわけあるかーっっ!! 別に好きじゃねーよ!」
 慌てるニール。
「別にっ、慌ててねぇっ!!」
 まぁとにかく。フフ……。ということは、だ。君はアルトちゃんを愛していない! ということになる。愛していれば助けられるはずだ! フフフ……。そーかぁ……。ストームくん、アルトちゃんのこと嫌いだったのかぁ……。
「作者が焚きつけるってどんなお話だ……」
「なっ……!! く、くそぉ! 剣3本一気投げ――!」
 もう1度ナイフを投げようとして、上を向く。
「げぇっ!?」
 既にキリオミはいなかった。逃げられたのだ。――長話してるから。
「ごるぁ――っ!! キリオミィッ!! どっこ逃げたぁっ!! アルトを返せ――っっ!!」
 しかし、ストームの声は空に空しく響くだけだった。