グローリ・ワーカ   第8章:攫われた仲間

「それにしても……なんだか暑いな……」
 ヤンが言って、辺りを見渡す。
 すっかり忘れていた。燃え盛る建物、自分たちが火の中にいることを。
「やべ! 忘れてた」
「や、まぁ、ともかく……」
 ヤンは1つ咳払いをし、魔法を放つ体勢に入った。
「火には水っ! 水を司るウンディーネよ……。水の存在を此処に認め、力を我が前に示せ! ウォーター!」
「おぉ!」
 先ほど魔物を倒すときにも使った魔法で、杖から水が噴き出し火を消していく。
 しかし、それでもまだまだ火は消し止められない。
「あーあ。アルトちゃんがいたら、さっきのアロー・レイン・シャワー? あれで火も消せそうなのにね……。ティルちゃんも気を失ってるし……」
 マニュアが溜め息を吐く。ヤン以外、誰も何もできることがない。
「私も、何をすればいいですか……? 何もできることが――」
「そ、そんなことないよっ! バケツリレーすれば!」
 シリアの言葉に、アリスが提案する。
「それしかないねぇ」
 マニュアがそう答えたとき、
「ピュウゥ、ピュッ、ピュ、ピュウ――」
 ピュウが何かを言って、しっぽから、なんと! 消防車を出した!
 この世界に消防車とかあるんかい!
「え? これで火を消せってこと?」
 マニュアが尋ねると、ピュウは頷きながら一声鳴いた。
「ていうか、こんなでかいのがどこに入ってたんだ!?」
 ヤンが言う。驚きの表情のみんな。
「驚きってかありえんだろっ!!」
 ニール……。ほら、まぁ、ギャグファンタジーですし。
「消防車の辺りがファンタジーじゃないよね」
 アリスちゃんも……。いや、うん、まぁ、とりあえず消火したら?
「これをどーやって動かすんだっ!?」
 なぜこっちに訊くっ! ピュウに言えっ!
「じゃあ、ピュウ! これはどーやって動かすの?」
 ……ピュウには優しいマニュアだった。
「ピ……ピュウ、ピュ、ピュ、ピュウ、ゥ……」
 困ったように、中を適当にいじってみるピュウ。
 ウ〜〜〜〜ッ!! ウ〜〜〜〜ッ!!
「「「「「アホーッ! それはサイレンだぁっ!!」」」」」
「ピュ、ピュゥピ……」
 怒られて、また別のところをいじってみる。
 ピ――ッ。ブゥ〜ン! キキキッ! グォングォン! ピーッ、ピーッ!
「「「「「それも、ちっが〜〜〜〜うっっ!!!!」」」」」
「ピュ、ピュウピ、ピュウゥ〜ッ!!」
 これだーとばかりにまた別のところをいじるピュウ。
 あ、水出た。
「おい、ばかっ! ホース巻きっぱなしじゃ……!」
 ホースは物凄い勢いで暴れ出し、辺りに水を撒き散らした。
「うわっ!」
「きゃぁっ!」
 慌ててホースを掴もうとするマニュア。
「あっ! 姉さん!!」
 水の勢いに、手を出す前にやられるマニュアだった。
「水圧でつ〜ぶ〜れ〜る〜〜〜〜……!!」
 そんなこんなで、なんとか火を消し止めたのだった……。