グローリ・ワーカ 〜Next Stage〜   第1章:赤と青の攻防戦

「この公園はストーム様がセンキョした!! ヨソ者は出てけー!」

 声のほうを向くと、滑り台の上に、いかにも悪ガキといった少年が、腕を組んで仁王立ちしていた。
 少年の後ろにはもう1人べつの少年がいて、なんとも帰りたそうな表情を浮かべている。
「……誰?」
「な、なんで! なんなの、アンタ! この公園は誰のものでもないでしょー!?」
 アリがその少年に向かって怒鳴る。
 少年はニヤッと不敵な笑みを浮かべて言った。
「今から、この公園はオレサマのものになったんだ! お祭り飽きた! この公園で遊ぶんだ! その砂場をよこせ!」
 その行動には根拠も道理もない。子供らしい、ただのわがままだ。
 ストーム様――と名乗った少年は、滑り台を滑り下りると3人のいる砂場のほうへと駆け寄ってきた。
「さぁ! その砂山もオレサマのだ! スコップとバケツをよこせ!」
「やだよ!」
 手を伸ばすストーム(様)。
 アリはその要望を突っぱねて、スコップを背中に隠した。
「よこせよ! ……おい、子分! スコップとりあげろ!」
 ストームが振り返り、未だ滑り台の上にいる子分へと命令した。
「……子分じゃねーし……ニールだし。公園に来てみただけなのに、なんなんだ……」
 疲れた様子でため息を吐き、滑り台を降りてくるニール。
 みんなより少し背の高い彼は、アリの持っていたスコップをいとも簡単に取り上げると、取り返せないように、頭の上へとスコップを掲げた。
「あ、ちょっと……! 返して、返してよぉ!」
 ぴょんぴょんと飛び跳ねるアリ。
 しかし、あとちょっとのところで届かず、だんだんと涙目になっていく。
「ちょっとー! 男子! いけないんだー。アリちゃん泣かした! 泣かさないでよ!」
 アルトが怒って少年2人に言う。
「う……」
 ストームがたじろぐ。
 が、すぐ立て直し、ムキになって言う。
「な、泣くほうが悪い! 泣くほうが弱いんだ! オレサマは悪くない!」
「おい。なにやってんだ?」
 突然降ってきたもう1つの声と同時に、ニールが手に持っていたスコップが奪われた。
「誰だ!?」
 ストームが振り返ると、そこにはまた知らない少年が立っていた。ニールよりもさらに大きいが、だいたい年齢は同じくらいだろうか?
「このオレサマ少年がアリちゃんのスコップを盗ったんです」
 アルトがその少年に訴える。
「オレサマ少年……っ、ストーム様だって!」
 ストームはアルトに対してそう訴えた。
「よくわかんないけど……えーと、はい、これ?」
 少年が涙を浮かべているアリへとスコップを渡した。
 アリは顔を上げ、途端に嬉しそうな表情を浮かべた。
「ありがとう!」
「なんで返しちまうんだよぉ!」
「ドロボーしたんだろ? ドロボーはだめなんだぞ」
「ドロボーじゃねーよ! この公園は、ストーム様のものなんだから!」
 ストームが地団駄を踏みながら訴える。
「?? 公園はみんなのものだろ?」
 少年は「?」を浮かべつつ言った。
「オレサマのなんだってー!」
 話が通じず、むきーっと悔しそうに叫ぶ。
 その様子を、ミリアはただ、おろおろとしながら見守っていた。
 少年は、少し考えた様子を見せてから、言った。
「んー……んじゃあ、みんなで勝負すればいいんじゃないか?」
「え?」