グローリ・ワーカ 〜Next Stage〜   第1章:赤と青の攻防戦

「えーと、ここに、さっき屋台の宝釣りで取ってきたマジックカラーボールがあるんだ」
 少年はそう言うと、肩からかけていたバッグから、2つの袋を取り出した。
 透明の袋にはそれぞれ、ボール2つとシールが入っているのが見える。
 マジックカラーボールとは、マジックアイテムと言われる、魔力がない者でも扱える魔法の道具の一種で、現在子供の間で流行っているおもちゃだ。赤と青のボールが1つずつ、そして白いシール4枚が1セットとなっている。1セットで2人〜4人まで遊べる。
 遊び方は、まず、シールを1枚体(見える場所)に貼る。
 2チームに分かれ、1つのチームは赤いボールを、もう1つのチームは青いボールを持つ。
 すると、白かったシールが、マジックカラーボールに反応してそのボールの色へと変わる。ボールに触れると、体に貼ったシールの色が変化するようになっているわけだ。
 ゲームスタートと同時に、お互いボールをぶつけ合う。もちろん、避けたり逃げたりしても良い。
 すべてのシールの色が赤か青、どちらかの色になればゲーム終了。その色の勝ちだ。
 色が変わってしまった者は、自ら味方チームのボールに触れに行って戻るのか、普通に相手チームとしてバトルするのかは、自分達で決める。人数が多いとなかなか終わらないので、時間制にするのが望ましい(タイムアップ時に色が多いチームが勝ち)。
 ちなみに、相手のチームの色に変化してしまったら、そこでゲームから外れるという遊び方もある。この場合、最後まで残っていた色のチームが勝ちである。
「2セットあるから、8人まで遊べるぞ。これで、勝ったほうが公園をセンキョすればいいんじゃないか?」
 少年の提案!
 おもしろそうだと、ストームはうきうきした表情を浮かべた。
「やる! つーか、オレサマ勝つし! やるぞ、子分!」
「だから、ニールだって……」
「負けないっす! ね、アリちゃん!」
「そうだよ! がんばろ!」
 アリがミリアへと振り向いて、そう声をかけてきた。
 ミリアは一瞬、尻込んだが、
「……うん!」
 と、頷いた。
「……でも、これ、よく知らない……」
「「「「「えっ!?」」」」」
 ミリアの言葉に、みんなが驚いて振り返った。
 その反応に、ミリアもおもわずびくっと体を震わせた。
「マジックカラーボール、知らねーの?」
「う、うん」
「マジかよ!? ウソだろ!?」
「え……」
「えーと――」
 少年が簡単にゲームの説明をする。ミリアはそれを真剣に聞いた。
「流行ってるのに、知らない子もいるんだね……」
 アリは驚いた表情で、アルトに向かって呟いた。アルトも頷く。
「でも、まだ持ってなかったから。遊ぶのは初めてっす」
「あ。それ、わたしもだ」
「――ってことだが、わかったか?」
 少年が説明を終える。ミリアは大きく頷いた。
「じゃあ、がんばれよ」
 そう言って、少年は去ろうと――
「って、おまえ、どこ行くんだよ!? おまえはオレサマのチームだろ!?」
 ストームが少年の服の裾を引っ張った。
 少年が驚いて振り返る。
「え、なんで!? マジックカラーボールあげたんだからいいだろ? しかも2つも!」
 少年の訴えに、ストームは首を横に振った。
「おまえはもうオレサマの子分になったんだからな! っつーわけで、おまえも青チームだ!」
「なんでだー!?」
 少年の声が空にまで響いた。