ひので町コント   4丁目:KIRAさんとPIKAさん

 4丁目に住む芸名・KIRA(きら)さん。
 彼はミュージシャン――を目指す若者(20代)。

「よし! 新曲が完成したZE」

 まだデビューはしてないけれど、バンドを組んで、毎日駅前の大通りで地道に活動をしていた。
 そこで演奏する曲目に、新たに追加される1曲が出来上がった。

「早速歌ってみるZE……☆」

 ギターをかき鳴らし、大きく息を吸い込み――。


 1・2・3・4!

 LOVE 僕の心に融ける LOVE バターのように
 僕がパンだとしたら 君はとろけるバター
 素敵に溶け合って1つになる LOVE
 ※ああ 君は乳製品 僕の心にカルシウム 骨太になるZE☆
  朝のスープにパンを浸して とろけてI・KE!!
  でも僕の朝食はお米派だZE!

 LOVE 僕の心に融ける LOVE チーズのように
 僕がピザだとしたら 君はとろけるチーズ
 華麗に溶け合って1つになる LOVE
  ああ 君は乳製品 僕の心にカルシウム 骨太になるZE☆
  夜のピザを2つにちぎって とろけてI・KE!!
  でも今日の夕食はカップ麺だZE!

 ※繰り返し

 ジャーン!!


「ふぅ……。決まったZE……☆」

 いい笑顔で顔を上げた。いい汗がキラキラ輝いている。

「さっそく聴かせに行くんだZE!」

 そう言ってギターを抱えたまま靴を履くと、大急ぎでバンドの仲間であるPIKA(ぴか)さんの元へと賭けていった。


「来たんだZE!!」

 バァン! と部屋のドアを蹴破る。
 中にいたPIKAが目をまんまるにしていた。

「PIKAぁー! 新曲ができたんだZE!」

「いいけど……。おまえ、もうちょっと落ち着けよ……」

 けっこう強面のPIKAがため息を吐いた。
 しかし、KIRAの勢いは止まない。

「さっそく聴かせるんだZE!」

「まぁ、弾いてみろ……」


 1・2・3・4!

(略)

 ジャーン!!


「決まったZE……☆」

 KIRAは相変わらずいい顔をしている。
 一方、PIKAは――そりゃもう最初からものすごく難しい顔をしていて、強面の顔がさらにひどいことになって、まるで鬼のようだ。
 PIKAはKIRAの肩をがっちり掴むと、彼を睨みつけてこう言った!

「――――感動した!!!! うおぉぉおぉ〜〜〜〜! さすがKIRAは天才だ――!」

 漢泣きを始めるPIKA。

「だろう!? やっぱりだZE☆ さっそく2人で練習するんだZE!!」

「お、おぉぅ……! こんな素晴らしい曲、感動だぁ……!」


 ――このバンドがメジャーデビューすることは、一生ないかもしれない。