ミス研日誌   20XX年 8月 第4週目

 穏やかなお盆休みは終わり、17日。
 朝早く――とはいえ、もう8時ではあるが――から、若者達は学校の門の前に集まっていた。
「さて、あとは黄金井先生だけだな!」
 玄関脇の時計を見上げながら、大和は言った。
「――ていうか、本当に、なんで合宿なんか……」
 げっそりしながら皇海が言う。
 その隣で、さらにげっそりしているのは――瑠美だ。相変わらず松葉杖をついている。
「あたしのほうが大変よ。この足よ……。部員に見つかったら、殺される……!」
「で、その変装かよ」
 瑠美は帽子を目深に被り、サングラスとマスクをしていた。怪しいことこの上ない。
「……だ・れ・の、せいだと思ってんのよ――――――――!!??」
「いやいや、俺のせいか!?」
 ボコボコにされながら、皇海は必死に抗議する。しかし、瑠美はその拳を止めなかった。
 その様子を、玲音が苦笑いを浮かべながら見ている。
「あはは……」
「あ、白川氏の持っているそいつは、ロサじゃないか?」
 大和が声をかけた。
 玲音のバッグから顔を覗かせているのは、たしかに、あの謎のモノノケであった。
「あ……ハイ。ロサちゃんも一緒につれてきちゃいました! いいですよね?」
 ロサを抱き上げながら、玲音が笑顔で尋ねる。
 その笑顔に、大和も笑って返す。
「あぁ。もちろんだとも! ロサも我が部の一員だからな!」
「ハイ!」
「――おい。ガキ共! 待たせたな!」
 轟音を立てながら、車に乗った黄金井が現れた。その車はまさしくヤンキー仕様で、仮にも教師たる者がこのようなものに乗っていていいものか甚だ疑問である。
「さぁ、乗れ乗れ! 緑山大社に向かうぞ! ――っと」
 普段から生徒にはあまり興味なさそうな黄金井が、ふと、一点を凝視し始めた。その視界の先にあるものは――
「な、なんでしょうか……?」
 玲音――の腕の中にいるロサであった。
「なんだそれええええええええっ!!??」
 目を輝かせながら車から降り、玲音の元へと駆け寄ると、ロサを捕まえて言った。
「これはなんだ!? 何者だ!? そもそも生き物なのか!? 半透明だが中身はどうなっているんだ!? あぁ実験したい! 解剖して中を見てみたい! ×××を△△△して○×□――!」
「いやああああああああああああっ!!!! ロサちゃん! 先生、やめてください――――!!!!!!!!」
「ぷうぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
「水饅頭が鳴いた!?」
「水饅頭ではなく、ロサだぞ。青柳くん」
「ていうか、本当にアレなんなのよ?」
 ぎゃーぎゃーと、朝から元気な5人であった。

 ――そんなこんなでようやく出発。
 数時間かけて緑山大社へとやって来た。
「緑山――――! 遊びに来たぞ――!」
「って……ゲ! 黒崎! おまえ、本当にうちに来るとは……」
 大和が神社の隣にある家を覗き込み、声をかけた。
 すると、清司が青い顔をしてこっちを覗いた。
「あらあら、いらっしゃいませ。大和くんも大きくなって。さぁ、どうぞおあがりください」
 清司の母がにこやかに対応をしてくれる。
「4日間、世話になるぜ」
「お、お世話になります」
 家に上がりながら、黄金井や玲音は頭を下げた(黄金井は声をかけただけではあるが)。
「あっ。こ、黄金井先生……いらっしゃいませ……」
 ミステリー研究部一行の中に黄金井の姿を見つけると、清司は途端に顔を赤くして、奥へと引っ込んでしまった。
 そんな面白い様子を見てしまった大和は、部屋を案内されている部員達には目もくれず、ニヤニヤしながら清司の後を追うのであった。
「緑山〜! おまえ……趣味が悪いな……」
 清司をとっ捕まえると、ニヤニヤしながら大和は言った。
「……おまえっ! ふざけるな! ……ていうか、顧問、黄金井先生だったのかよ……!」
「あれ? 知らなかったのか〜? ミス研入るか?」
 ニヤニヤしながらも、勧誘は忘れない。
「入っ……! いや……それはっ……!」
 真っ赤な清司を見ながら。大和はニヤニヤが止まらないのだった。

 部屋を案内してもらい終えると、それぞれが自由行動を始めた。
 大和はあいかわらず清司にちょっかいをかけている。
「……というか、我が家になにしに来たんだ?」
 清司がげんなりしながら尋ねた。
「それはミステリーに対する修行だな!」
「ミステリーに対する修行ってなんだよ……」
 自信満々に答える大和に対し、清司はさらにやつれていく。
「いやーお盆はなんだか祭りで忙しいというから、これでも少し時期をずらしたんだぞ?」
「それはどうも。まだいろいろと忙しいんだがな」
「しかし、本当はお盆にここで行われるという祭りの時に来たかったものだが」
「やめろ。相手なんかしていられない」
「今なら相手してくれるということか? 緑山」
「えぇい! そのいやらしい顔をやめろ!」
「失礼な!」
「仲良しですねぇ」
 そんな2人のやりとりを、玲音は廊下からニコニコと眺めていた。

「あ。白川氏」
 玲音に気付いて、大和は声をかけた。
「ふぇっ! ぶ、部長!」
「白川氏もこっちへ来ないか? 一緒に話そうではないか」
「え、え、あ。はい!」
 玲音、そしてロサも交え、輪になるように座ると、軽く自己紹介し合い、また他愛もないことを話し始めた。
「――ところで」
「え、はい?」
 清司が玲音に向かって声をかけた。
 しかし、その視線の先は玲音ではなく――
「――その生き物」
「あぁ、おまえが出したモノノケだ。ロサと名付けたぞ」
 大和がこともなげに言う。
 瞬間、清司は青い顔をして立ち上がった。
「なんで! 消えていないんだ!?」
「なんだよ? 落ち着け、緑山」
「落ち着いていられるか!」
「え? え?」
 玲音はオロオロするばかり。
「本当ならあんな弱いモノノケなんて、すぐ消えるはずだ! なんで……! いや、それはそれとして……ここに連れてくるなど!」
「どういうことだ?」
 大和が清司の目をまっすぐ見て尋ねる。
 清司は顔を逸らした。
「絶対に、うちの者には見つからないようにしろ。名前を付けるほど大切ならばな」
 そうして、それだけ告げると、どこかへと行ってしまった。
「一体、なんだというんだ……?」

「というわけで、彼が緑山だ。緑山 清司」
「はじめまして」
 ようやく皇海、そして瑠美にも清司のことが紹介された。
「つーか、あんたがモノノケを――」
 皇海が清司にモノノケの件を問い詰めようとしたところ、すばやい動きで口を塞がれた。
「なにを聞いたか知らないが。そのことを口にするな。すぐに忘れろ」
 清司のあまりにも真剣な眼差しに、皇海も黙るほかなかった。
(なんなんだよ……??)

 さて、この日はこの神社の話を、宮司である清司の祖父から聞いたくらいで活動は終わった。

      *

 2日目の朝。
「今日は百物語を行うぞ!」
「朝から!?」
 大和の言葉に驚く皇海。
「まさか。夜でないと雰囲気が出ないではないか」
「夜までなにしてりゃいいっつーんだ!?」
 その返答にまたツッコんでしまう皇海だった。
「いやだな、青柳くん。合宿のしおりを読んでいないな?」
 大和はどこからかしおりを取り出した。
「ほら、スケジュールが書いてあるだろう。夜まではろうそくの買出しと自由時間だ!」
「自由時間多すぎィ!!」

 自由時間はみんなで町を散策したりして、結構楽しんだ。
 そして、夜――
「……では、百物語を始めるぞ」
 100本のろうそくに囲まれ、大和は静かに始まりを告げた。
 そんな大和の様子を、皇海、玲音、瑠美の3人は緊張した面持ちで見ていた。
 ちなみに、黄金井はお酒の力により、すでに眠りに就いていた。
「まず、お――私から。さて、これは先週のお盆の出来事だ――」
 そうして始まった大和の話は意外にも怖く、みんな青い顔をして話を聞いていた。
「――というわけで、1話目終了」
 そっとろうそくを吹き消した。
 大和以外の3人はガタガタ震えている。
「さて、次は誰かな――」
「おまえら、なにをやっている――――――――!?」
 2話目を振ろうとしたそのとき、部屋のふすまを開けて入ってきたのは、清司の父だった。
「そんな怪しいことやってないで、さっさと寝なさい! 早寝早起き! 不摂生な生活を送っていると体も心も乱れてしまうぞ!」
「あぁぁ! せっかくの活動が――!」
 ――こうして、百物語は1話を話しただけで終わってしまったのであった。

      *

 3日目の朝。
「今日は、町でお祭りがあるらしいので、そちらへ行くぞ!」
「おぉ」
 本日の大和の提案には、皇海も少し浮かれて返事をした。
「で、花火が終わった後、肝試しだ!」
「な、なんだって――!?」
「当然じゃないか」
 ミステリー研究部だもの。

「遅ぇな」
 玄関で女子達を待ちながら。皇海は文句を垂れていた。
「まぁしかたないのではないか。女の支度は時間がかかるものだろう」
 大和は涼しい顔をしながら言うが、納得いかない。
「にしても、もう10分以上――」
「お待たせしました!」
 そこへようやく玲音、瑠美、そして黄金井の3人がやって来た。
「まったく。すごく待った、ぞ……」
 声のほうを振り向いて、皇海はおもわず固まってしまった。
「どう? このカッコ! おばさまに着せてもらったのよ!」
「似合うだろ?」
 3人とも、髪をまとめ、下駄を履き、そして、美しい浴衣を身に纏っていた。
 玲音も瑠美も(瑠美は松葉杖をついているのがもったいない感じもするが)、よく似合っている。
「馬子にも衣装……。いや、豚に真珠……?」
「なんですって――――――――!!!!????」
 余計な一言を呟き、瑠美に殴られる皇海。
 そんなこと言わなきゃいいのに、この2人は、きっとこういう関係なのだろう。
「ところで。先生はその歳でそんな格好するのはどうなのだろうな?」
「あぁ、先生は……」
「おい。ガキ共。なにか言ったか?」
「「滅相もございません」」
 あの目は、殺られる――! そう思った2人は慌てて否定したのだった。
「なに言ってるんだ! よくお似合いじゃないか!」
 おもわず、清司は大和に向かって怒鳴っていた。
「お。おまえ、よくわかってんな! いい子だ!」
「え? あ、いや、えっと……!」
 本人に聞かれていたことに気付き、清司は再び赤くなってしまった。
「というか、緑山。おまえ、一緒に祭りに来る気なのか?」
 大和が清司に尋ねる。
「自分が近所の祭りに行ってなにが悪い!」
「いっそ入部してしまえよ」
「しない! 断じて!」
「しないのか?」
 黄金井も一緒になって尋ねる。
「う。黄金井……先生……」
 そして再びニヤニヤする大和。
「やめろ!!」
「別になにも言ってないではないか♪」
「その顔をやめろ!!」
 そんなことをやっているいっぽうで、皇海は――
「…………」
(ていうか、白川さん……メチャメチャかわいいな!?)
 そんなことを思いながら、チラリと玲音を見た。
 その視線に気付き、玲音はにこりと微笑む。
「――〜〜〜〜っ……!! い、行こう! 早く!」
 恥ずかしくて、見ていられなくなって。皇海は町へと駆け出した。
「ちょっと! 皇海!」
 瑠美もそれについていこうと、松葉杖を使って必死に歩く。
「……ふむ。そうか」
「? どうしたんですか?」
 大和はそんな2人の後ろ姿を見ながら呟いた。それに玲音が気付いて声をかける。
「――いや? そうだな。白川氏はかわいいってことさ」
 そうさらりと答え、玲音の頭を撫でた。
「ふぇっ!!??」
 玲音はそれはもう真っ赤になり、少しくらくらしてしまう。はたして、無事にお祭りまで辿り着けるのか、不安になるくらいに。
「…………青春ね。というか、いつまできゃっきゃっしてるのかしら、あの子達」
 そんなみんなの様子を、清司の母は家の中から見ていた。

 町は屋台で溢れ帰り、お神輿や踊る人達が道を練り歩く。
「「おぉぉ!!!!」」
 皇海と瑠美は目を輝かせた。
「射的やろーぜ!」
「いいわよ! 勝負ね!」
「お! じゃああたしも参加するぜ!」
「あ、じゃ、じゃあ、自分も!」
 黄金井、そして清司も交じり、4人は射的で勝負を始めてしまった。
「仲いいですね」
 そんな楽しそうな4人を、玲音と大和はにこにこと眺めていた。

「松葉杖だと難しいわね」
 瑠美はクマのぬいぐるみを狙いながら呟く。
 パンッ!
 弾が放たれ、それは見事に標的を撃ち抜いた。
「キャー! やったわ!」
 おもいのほか上手くいき、本人もはしゃぐ。
「マジかよ」
「お。なかなか筋がいいじゃねーか」
 周りにも褒められ、瑠美はますます嬉しくなる。
 そして、松葉杖が必要な足だということも忘れて飛び跳ね、体勢を崩してしまった。
「きゃ……!」
「おい、ルビー!」
 倒れかけた瑠美を、皇海が慌てて抱きとめた。
「……っぶねーな! おまえ、自分の足のこと考えろよ!」
「あっ、ごごごめんっ! で、でも、そもそも、この足は皇海が悪いんだからぁーっ!!」
 顔を真っ赤に染めて、瑠美は人ごみの中へと駆け出してしまった。
「って、おい! 待てよ! つか、ぬいぐるみ!」
 皇海は瑠美が撃ったクマのぬいぐるみを受け取ると、瑠美を追いかけて人ごみへと消えていった。
「おい。青柳くん、赤城氏!」
 それを大和が慌てて追いかけようとしたが、1歩踏み出したところで、立ち止まって考え込む。
(いや、赤城氏の様子から察するに――青柳くん1人に任せたほうがいいのか? いや、しかし、青柳くんは……)
「――まぁ、いいか」
 苦笑いを浮かべて、天を仰いだ。
「え? お、追いかけなくていいんですか!?」
 玲音があたふたしながら尋ねる。
「赤城氏のことは、青柳くんに任せようではないか。それと――」
 大和は清司のほうを振り返った。
「こ、こうですか?」
「そうそう。そうやって、よく見て狙うんだ」
 黄金井から射的のレクチャーを受けながら、清司はゲーム機に狙いを定めていた。
「――こっちも、2人きりにしてやったほうがいいかな。白川氏、ちょっと2人で祭りを回るか」
 そう言って、大和は玲音に笑いかけた。
「え? ――は、ハイ!」
 それに、玲音も笑顔で答えるのだった。

 相手は松葉杖でちゃんと走れるはずもないのに――
「完っ全にはぐれた……!」
 皇海は1人、人ごみの中をさ迷っていた。
(おいおい。ルビーはいねーし、白川さんと部長とも完全にはぐれちまったし、だんだんと日も暮れてきたし……どうしたら……)
「部長ー! 白川さーん! あと、ルビー!!」
 駄目元でみんなの名前を叫んでみる。
 すると、
「……皇海?」
 どこからか声がする。
 声のほうを振り返ると、建物と建物の間にある細い路地に、そいつはいた。
「ルビー!」
 その名を呼び、急いで駆け寄る。
「おまえ、そんなとこでなにやってんだ」
 瑠美は座り込んだまま、皇海を見上げて答えた。
「…………人多くて、この足だし、疲れちゃって……」
「おまえはアホか」
「な、なによー」
 ふてくされたように、ふくれる瑠美。そんな瑠美に、
「ん」
「え?」
 皇海はクマのぬいぐるみを差し出した。
「これ……」
「おまえが取ったやつだろーが。わざわざ持ってきてやったんだ、感謝しろ」
「あぁ、うん……。ありがと……」
 小さく感謝を述べると、瑠美は笑顔でそのぬいぐるみを抱き締めた。
「さて、と。行くぞ」
 そう言って、皇海は屋台の並ぶ道のほうを指した。
「うん」
 瑠美も立ち上がった。瞬間――
「きゃあ!?」
 一瞬、瑠美はなにが起こったのかを把握できなかった。
 瑠美の視界は一気に高くなっていた。
 ――なぜなら、それは、皇海が瑠美を肩に担いだからだった。
「ち、ちょっと!? 皇海!?」
「またはぐれるのめんどくせーし。おまえ、杖ちゃんと持ってろよ」
「で、でもっ、これは……っ!」
「あーもー行くぞ」
 恥ずかしさで真っ赤になり、瑠美は皇海の背中に顔を埋めた。

 …………ド――――ン!!

「お。花火だ」
「え?」
 大きく響く音と、皇海の声に、またすぐ顔を上げる。
 見上げれば、色とりどりに咲いた花が広がる空を埋め尽くしていた。

「よしっ! りんごあめ買おうぜ!」
「ハイ! あ、先生。花火ですよ」
「花火だと!? あの派手な音、光。こいつぁ血が騒ぐぜ」
「なんの血ですか……!?」
 清司と黄金井も、空を見上げ、同じ花火を見ていた。
「花火もいいが、りんごあめもだな! 花より団子だ!」
「自分が買います! 奢りますよ!」
 購入しようとりんごあめに手を伸ばす黄金井を、清司が止める。
 しかし、あっさりとその提案は拒否をされてしまった。
「は? 本気か? ガキが、んな気を遣わなくていいんだよ。その気持ちはありがてーけど、おとなしくおまえが奢られときな」
 拒否されただけでなく、逆に奢られてしまう。
(……先生は、自分のこと、子供としか思っていないんだな……)
 受け取ったりんごあめを齧りながら、清司は少し悲しくなった。
「お。あの花火。赤くてりんごあめみてーだな」
 そして、2人は再び空を見上げた。

「始まったな」
 町を流れる川べりで、大和と玲音も空を見上げていた。
「……綺麗ですね」
「そうだな」
 玲音はチラと大和の横顔を窺ったあと、小さく微笑んだ。
 それから、手に持った巾着の中をそっと覗いた。その中には、あるものが大切そうに入れられている。
(……渡すなら、今、ですよね…………)
 鼓動が早くなる。
 空を見上げる横顔に、玲音はおもいきって声をかけた。
「あ、あのっ……!」
「ん?」
 大和が振り返る。綺麗な黒髪がさらりと揺れた。
「あの、こ、これ……遅くなりましたけど、お誕生日おめでとうございます」
 真っ赤になって俯きながら、綺麗にラッピングされた小さな紙袋を差し出した。
「え? 誕生日? あぁ、そういえば、この間誕生日だったな」
「ハイ……。部長の誕生日が部活お休みで会えなかったもので。あの、遅くなってしまってごめんなさい」
「気を遣わなくてもいいのだぞ? 俺も白川氏にプレゼントあげられてないし」
「入部したの、誕生日の後でしたしね。でも、いいんです。いつもお世話になっているので、あげたかったんです。あの、よかったら、受け取ってください……!」
 念を押すように、再び紙袋をずいと差し出す。大和は困ったように笑って、それを受け取った。
「いいのかな? ……ありがとうな」
「……ハイ!」
 無事受け取ってもらえたことに、玲音は嬉しくなって微笑んだ。
 大和が紙袋を開けると、中から出てきたのはドクロの形をしたピアスだった。
「あ、あの、部長の耳にピアスの穴が見えたので。こんなものになってしまいましたが……もし、似たようなのを持ってたらごめんなさい」
「いや、まぁ、たしかにドクロ型のピアスは持っているが、同じのは持ってないし。すごく嬉しいよ。本当にありがとう」
 お礼を言うと、さっそく耳にはめてみる。ドクロ型のピアスは、彼にぴったりだった。
「――似合うか?」
「とてもお似合いです!」
「そうか」
 2人は顔を見合わせてまた笑った。
 それからゆっくりと顔を上げ、空いっぱいに美しく咲き誇る花を静かに見ていた。

 ――そして。
 大いにはしゃいだ6人は、疲れから、帰宅後すぐに眠りに就いてしまった。

      *

「肝試しの予定が――――――――!!!!」
 4日目の朝。
 そう嘆くミステリー研究部部長の姿があった。
「最終日ですしね。もうする暇ねーな」
 諦める部員達。しかし、
「もう1泊しないか!?」
 大和は引かない。
 その提案に、清司は答える。
「こっちだって予定があるんだ。無理言うな。というか、こっちの迷惑も考えてくれ」
「じゃあっ! 明日の夜! 明日は部活休みの予定だったが、学校に集まって肝試ししようではないかっ!」
「あっ、あの、すみません……。明日はもう予定入ってしまっているんです…………」
 2つ目の提案には、玲音が申し訳なさそうにそう答えた。
「では! いつやると言うのだ!? 来週か!?」
「そういや、俺、来週は家族旅行とか言って海外連れてかれるから部活行けねーんだった」
「なんだと!?」
 皇海の言葉に、大和は目を剥いた。
「だったら、いつやると言うんだね!? 今でしょ!?」
「いや、今じゃないだろ……」
 おもわずツッコむ。
「夏休み最終日……ですかね……?」
 玲音が言う。
 現実的に、1番近く実行できそうな日は、もうそれしかなかった。
「では! 8月の31日の夜に、再び学校の正門に集合だ!」
 涙を拭きながら、大和は宣言した。
(部長に会えるのは嬉しいですけど……肝試し、ちょっと怖いですね……)
 玲音はそんなことを考えていた。
((宿題終わるだろうか……?))
 皇海と瑠美も、別の部分で若干の不安を抱いていた。
「で、青柳くんはどこに旅行に行くのだ?」
「え。アメリカだけど……」
「ならば、青柳くんはアメリカにあるミステリースポットを調査して結果を教えてくれ」
「嫌だよ!?」
「ウィンチェスター・ミステリーハウスとかどうだ、有名だぞ。グランド・キャニオンは世界の自然七不思議とも言われているし、まぁこれは自然の驚異が素晴らしいという話だが。アメリカは広いだけあって、ほかにも――」
「だから嫌だよ!!」
 大和の無茶振りに、皇海は拒否し続けるのだった。

「よし。んじゃ、ガキ共、帰るぞ。乗れ」
 車に乗り込み、エンジンをかける。
「緑山。世話になったな。また学校で」
 窓から顔を出し、大和は清司にお礼の言葉を投げかけた。
「あぁ、また夏休み明けにな」
「なにを言っている。おまえも肝試しに来るのだぞ?」
「なんでだ!?」

 ――こうして、ミステリー研究部の合宿は終了した。
(それにしても――)
(なんだか――)
(遊び倒した記憶しかないわね……)
 皇海、玲音、瑠美の3人は、そんなことを思った。