涼しげな顔。笑う。
 君の声がカラカラと、心地よい音となって響く。
 出ては消える泡のような気持ちを、夏に丁度いいと購入しておいたスカッシュに見立てて。
 スカッシュを飲み干した。





  パズル・ノート/パズル・レター





 ばらばらばらばら。

 パズルのように散りばめられた言葉は、君には届かない。
 そっと4文字を忍ばせてみても、やはり気付くはずもなかった。

 君が言う。「パズルみたいだ」

 もしかして、気付いてくれたのかと、少しだけ期待した。
 そうではなかった。
 この言葉たちが、隣り合わないパズルピースと繋がっている。
 それだけだった。

 しっかりと繋げるのは怖い。
 しっかりと繋げたら、はっきりと伝わってしまうから。
 それでも、このままではダメだと、私自身も思っていた。



 時折、涼しげな顔で彼は笑った。
 それは、暑い夏の間を通り抜けて行く、涼しい風のように。彼のその爽やかな笑い声だけが心地よい音となって響く。
 彼のことを見ていられなくなって、机の上に置いたペットボトルに入ったスカッシュの方へと目をやった。ペットボトルの中で、泡が浮かんでは消える。まるで、この私の気持ちのようだ。
 気を紛らわすように、そのスカッシュを飲み干した。



 ただ繋げる。
 パズルのように正しく繋げる。
 まだ足りない。
 このままでは届かない。

 パズルのように散りばめられた言葉を、正しく繋ぎ合わせて、4文字を作り出した。
 それでも、完成までには至らなかった。
 その先が、このパズルには必要なのだと――



「好きです」




 文章として書き出したものがノート。届けたいために書き出したものがレター。的な感じで2つのタイトル。謎。
 えーと、読んで分かる通り、Short Storyの『ジグソーパズル』とリンクしております。
 隠された4文字の答えになるかなーと思いつつ、なったようななってないような。
 ↓そして、今更ながら「初出いらなくね?」と思ってみたので消しました。本当にいらないだろう。


――――2014/07/13 川柳えむ