エンタメクラブ Act.5:学校の怪談
しーん……。
エンターテイメントクラブの部室が静まり返る。
エンターテイメントクラブの部室=元被服室。
――つまり……?
「うわああああああああああああ!!」
誰かが叫び声を上げた。
それがきっかけとなって、叫び声があちこちで連鎖していく。
「きゃああああああっ!?」
「いや――――っっ!!」
「そ、それってそれって……! こ、この部屋で、死……!」
「か、帰る! お家帰る!!」
ぎゃーぎゃーわーわー。
もうみんなで大混乱。収拾がつかない。
――かく言う私も、もう叫び声を上げるしかできなかったわけだが。
「ほ、本当に、この部屋で……!?」
あすちゃんが怯えながら華藤さんに問い掛ける。
「らしいんだけど、真実は知らないよぉ。それが本当だったら、さすがに私も怖いし」
まったく怯えているようには見えないが――華藤さんがそう言った。
少しだけほっとする面々。
「それで、条件っていったいなに? この話と関係あるの?」
私がもう1度尋ねる。
華藤さんはいよいよ面白そうに笑って、
「この話がどこまで本当か調べてほしいって感じかなぁ〜。興味本位だけど、真実知りたいかなぁって」
「なんだ、そんなこと……」
ほっと胸を撫で下ろす。
それなら、着ぐるみ理事長に訊けば早いだろう。なんと言っても理事長。この学校の歴史、出来事くらい知っているだろう。――正直に教えてくれればだけど。
「でも、これ、七不思議の1つなんだけど、知らなかったのぉ?」
「へ、七不思議? 霊に殺されたんじゃないかってこと?」
華藤さんは頷いて、
「うん。それから『被服室に1人でいると自殺した男子生徒の霊に殺される』っていう七不思議になったんだよぉ」
――この部屋に1人で……。その話を知ったら、もう1人ではいたくないなぁ……。でもさぁ……。
「私も着ぐるみ理事長も、短い時間だけど1人でいたことあったような……」
ふと思い出して言う。――たしか、部室貰った後、1人でどうしようか考えていたはず……。
そんな私に、森がいじわるく言った。
「あぁー。もうおまえ終わったな、取り憑かれたわ」
「えぇー!?」
「取り殺されるのも時間の問題だな」
松も便乗して言う。
私は焦って、
「ちょ、ちょっと待ってよ! そんな怖いこと言わないでよー!」
がしっと森の腕を掴んだ。
そんな過去があったなら、洒落にならない話だ。怖くなって半泣きになる。
森は私の目を見ると、
「いや、まぁ、その、じょうだ――」
「なにを面白い話してるんだいー?」
あらゆる雰囲気をぶち壊す声。そう、着ぐるみ理事長だ。
着ぐるみ理事長はみんなを見回すと、
「なになにー? 面白い話? ってか、人増えたねー! すごいすごい!」
空気を読まずに、笑顔でそう言った。
自分が部員を増やせと言ったのに、なんとも無責任な発言だ。
――あぁそれよりも、着ぐるみ理事長に確認を取らなくては。この部屋で本当に昔、そんなことがあったのか。七不思議が本当なのかを。
「着ぐるみ理事長〜」
「あーあったあった。あれは恐ろしい事件だった」
こちらが質問する前に、なんとも適当な口調で回答をする着ぐるみ理事長。
「また心を……。って、それよりも、あったんですか!? 実話!?」
驚いて着ぐるみ理事長を見つめる。
彼女は目を逸らすと、
「ん〜。そうねぇ。あったよ、うん。1人の女の子が閉じ込められてしまってね」
あると言うわりには、なんとも歯切れの悪い回答。いや、それよりも明後日の方向を見て喋るこの態度が怪しい。
――それに、この話、さっきからなにかが引っ掛かるんだよね……。
「着ぐるみ理事長、本当に――」
もう1度確認しようとしたそのとき、
「もうあたし、無理! 帰る! 絶対無理!!」
宵ちゃんが声を上げた。
普段の大きな態度からは想像がつかないが、意外にも彼女は怖い話が苦手なようだ。宵ちゃんが怯えて叫んでいるのがとても珍しくて、ついつい見入ってしまった。
「あたし帰る! こんな部屋いたくない!」
そう叫ぶ宵ちゃんに、私は冷静になって言う。目の前に混乱している人がいると、なぜだか逆に落ち着ける。というか、だからこそ落ち着いて対処しなきゃいけない気がしているからだ。
「宵ちゃん、それ死亡フラグ! それに、ここで帰っちゃったら出番がなさ過ぎだよ! 鬼ごっこだって参加してないのに!」
――出番って、けっこう重要だと思う(部活の出席的な意味で)。
私がまっすぐ宵ちゃんを見つめると、彼女はぴたりと叫ぶのを止めて、
「……だ、大丈夫大丈夫」
そう自分に言い聞かせるように呟いていた。まだまだ怯えている様子だが、多少は落ち着いたようだ。
「まぁ、とにかく、あったらしいですよ……」
今度は華藤さんのほうを向いて言う。
彼女は少し考えてから、
「う〜ん。それなら、どうにかしようよ。幽霊成仏させるとかさぁ」
とんでもないことを言い出した。
――というか、条件はクリアしたはずなんですけど!?
「どうにかできたら入ってあげるよぉ〜」
傍若無人にそう言う。
その態度に波長が合ったのか、着ぐるみ理事長が手を上げて、
「じゃあ、みんなでここに泊まるか! っていうか、夜集まるか! 忍び込みますかー!」
この着ぐるみ理事長、ノリノリである。
「俺やる、俺やるー!」
それに便乗するのは松。さらには森も、
「面白そうだな〜! よっしゃ、やろーぜ! 俺、愁に連絡しとくわ」
「じゃあ……高木も呼ぶわね」
あすちゃんもか……。
「え、えぇー……!?」
戸惑っているのは茜さん。
そして、宵ちゃんは――
「絶対いやああああ――――――!」
叫び声が校舎内をこだました。
しーん……。
エンターテイメントクラブの部室が静まり返る。
エンターテイメントクラブの部室=元被服室。
――つまり……?
「うわああああああああああああ!!」
誰かが叫び声を上げた。
それがきっかけとなって、叫び声があちこちで連鎖していく。
「きゃああああああっ!?」
「いや――――っっ!!」
「そ、それってそれって……! こ、この部屋で、死……!」
「か、帰る! お家帰る!!」
ぎゃーぎゃーわーわー。
もうみんなで大混乱。収拾がつかない。
――かく言う私も、もう叫び声を上げるしかできなかったわけだが。
「ほ、本当に、この部屋で……!?」
あすちゃんが怯えながら華藤さんに問い掛ける。
「らしいんだけど、真実は知らないよぉ。それが本当だったら、さすがに私も怖いし」
まったく怯えているようには見えないが――華藤さんがそう言った。
少しだけほっとする面々。
「それで、条件っていったいなに? この話と関係あるの?」
私がもう1度尋ねる。
華藤さんはいよいよ面白そうに笑って、
「この話がどこまで本当か調べてほしいって感じかなぁ〜。興味本位だけど、真実知りたいかなぁって」
「なんだ、そんなこと……」
ほっと胸を撫で下ろす。
それなら、着ぐるみ理事長に訊けば早いだろう。なんと言っても理事長。この学校の歴史、出来事くらい知っているだろう。――正直に教えてくれればだけど。
「でも、これ、七不思議の1つなんだけど、知らなかったのぉ?」
「へ、七不思議? 霊に殺されたんじゃないかってこと?」
華藤さんは頷いて、
「うん。それから『被服室に1人でいると自殺した男子生徒の霊に殺される』っていう七不思議になったんだよぉ」
――この部屋に1人で……。その話を知ったら、もう1人ではいたくないなぁ……。でもさぁ……。
「私も着ぐるみ理事長も、短い時間だけど1人でいたことあったような……」
ふと思い出して言う。――たしか、部室貰った後、1人でどうしようか考えていたはず……。
そんな私に、森がいじわるく言った。
「あぁー。もうおまえ終わったな、取り憑かれたわ」
「えぇー!?」
「取り殺されるのも時間の問題だな」
松も便乗して言う。
私は焦って、
「ちょ、ちょっと待ってよ! そんな怖いこと言わないでよー!」
がしっと森の腕を掴んだ。
そんな過去があったなら、洒落にならない話だ。怖くなって半泣きになる。
森は私の目を見ると、
「いや、まぁ、その、じょうだ――」
「なにを面白い話してるんだいー?」
あらゆる雰囲気をぶち壊す声。そう、着ぐるみ理事長だ。
着ぐるみ理事長はみんなを見回すと、
「なになにー? 面白い話? ってか、人増えたねー! すごいすごい!」
空気を読まずに、笑顔でそう言った。
自分が部員を増やせと言ったのに、なんとも無責任な発言だ。
――あぁそれよりも、着ぐるみ理事長に確認を取らなくては。この部屋で本当に昔、そんなことがあったのか。七不思議が本当なのかを。
「着ぐるみ理事長〜」
「あーあったあった。あれは恐ろしい事件だった」
こちらが質問する前に、なんとも適当な口調で回答をする着ぐるみ理事長。
「また心を……。って、それよりも、あったんですか!? 実話!?」
驚いて着ぐるみ理事長を見つめる。
彼女は目を逸らすと、
「ん〜。そうねぇ。あったよ、うん。1人の女の子が閉じ込められてしまってね」
あると言うわりには、なんとも歯切れの悪い回答。いや、それよりも明後日の方向を見て喋るこの態度が怪しい。
――それに、この話、さっきからなにかが引っ掛かるんだよね……。
「着ぐるみ理事長、本当に――」
もう1度確認しようとしたそのとき、
「もうあたし、無理! 帰る! 絶対無理!!」
宵ちゃんが声を上げた。
普段の大きな態度からは想像がつかないが、意外にも彼女は怖い話が苦手なようだ。宵ちゃんが怯えて叫んでいるのがとても珍しくて、ついつい見入ってしまった。
「あたし帰る! こんな部屋いたくない!」
そう叫ぶ宵ちゃんに、私は冷静になって言う。目の前に混乱している人がいると、なぜだか逆に落ち着ける。というか、だからこそ落ち着いて対処しなきゃいけない気がしているからだ。
「宵ちゃん、それ死亡フラグ! それに、ここで帰っちゃったら出番がなさ過ぎだよ! 鬼ごっこだって参加してないのに!」
――出番って、けっこう重要だと思う(部活の出席的な意味で)。
私がまっすぐ宵ちゃんを見つめると、彼女はぴたりと叫ぶのを止めて、
「……だ、大丈夫大丈夫」
そう自分に言い聞かせるように呟いていた。まだまだ怯えている様子だが、多少は落ち着いたようだ。
「まぁ、とにかく、あったらしいですよ……」
今度は華藤さんのほうを向いて言う。
彼女は少し考えてから、
「う〜ん。それなら、どうにかしようよ。幽霊成仏させるとかさぁ」
とんでもないことを言い出した。
――というか、条件はクリアしたはずなんですけど!?
「どうにかできたら入ってあげるよぉ〜」
傍若無人にそう言う。
その態度に波長が合ったのか、着ぐるみ理事長が手を上げて、
「じゃあ、みんなでここに泊まるか! っていうか、夜集まるか! 忍び込みますかー!」
この着ぐるみ理事長、ノリノリである。
「俺やる、俺やるー!」
それに便乗するのは松。さらには森も、
「面白そうだな〜! よっしゃ、やろーぜ! 俺、愁に連絡しとくわ」
「じゃあ……高木も呼ぶわね」
あすちゃんもか……。
「え、えぇー……!?」
戸惑っているのは茜さん。
そして、宵ちゃんは――
「絶対いやああああ――――――!」
叫び声が校舎内をこだました。