エンタメクラブ Act.5:学校の怪談
「じ、条件ってなに?」
一緒に部室へと連れてきた華藤さんに尋ねる。メガネは外れたままだ。
華藤さんは最初きょろきょろとしていたが、私の言葉を聞くと、
「ふ〜ん。ちょうどいい感じ」
なにか1人で納得したように言う。
「え? なにが?」
私が尋ねると、そんな私の顔をまじまじと見て、冷たく笑いながら言う。
「知らないのぉ、木谷さん? この部室がもともとなんの部屋だったのか」
「え?」
「え! あ、もしかして……!」
あすちゃんが驚いた表情になる。なにかに気付いたようだ。
「なに?」
まったく話が見えない私は、1人やきもき。――と思ったけど、ほとんどの人はわからないという顔をしていた。
華藤さんがにやにやして言った。
「被服室だったんだよぉ」
「被服室?」
「そう。今は特別教室棟にある部屋で授業を行ってるけど、もともとはここに被服室があったんだよぉ」
着ぐるみ理事長は、もともとなにかの部屋だったことは言っていたけれど――被服室がここにあったなんて、初耳だ。
「なんでなくなったんですかね?」
茜さんが疑問をあげる。――そう、それ。そのとおり。
「特別教室棟に新しく部屋ができたからじゃねーのか?」
――あぁ、そっか。単純にそれか。
森の言葉に納得していたところ、華籐さんは首を左右に振った。
そして、華藤さんはにやにやしたまま言った。
「それは、事件があったんだよー」
「事件……?」
数年前――
「ねぇー帰ろ!」
放課後の教室。1人の少女が、クラスメートの少女に声を掛ける。
「ごめん。家庭科の課題がまだ終わってなくて、今日残らないと……」
誘われたクラスメートの少女は、片手を立てて謝った。
「もー! しょうがないな。先帰るよ」
「うん、ごめんね」
仕方なく先に帰ろうと教室を出ようとしたとき、彼女は思い出したように言った。
「そうだ。気を付けてね、被服室」
「え? なにが……?」
扉に手を掛けて、少女は振り返る。
「被服室にはね、出るんだよ……」
「えー? で、出るって……なにがよぉ……」
少し怯えながらも、「冗談でしょ」といった表情で笑う。
しかし、少女は神妙な面持ちで言った。
「出るんだよ……。いじめを苦に自殺した男子生徒の霊が。あんたみたいに放課後課題のために残ってたんだけど、いじめてた生徒が鍵を掛けちゃったんだって。もうずっといじめられてきた彼は、翌日、自殺してたのを見つけられたって……」
「や、やぁだー! ちょっとやめてよー!」
クラスメートの少女は怖くなり、慌てて止めた。その目にはうっすら涙が浮かんでいる。
話をしていた少女はいたずらっぽく笑うと、
「なんてねー! まぁ気を付けてね! じゃ、お先に」
そう告げて教室を出て行った。
少女はほっと溜め息を吐くと、被服室へと向かった。
「まったくもー。冗談ばっかり言うんだから」
ぷりぷり怒りながら作業を進める。そのまま集中してしまい、気付けば下校時刻をとうに回っていた。窓の外はすでに真っ暗だ。
きりを付けて片付けを始めると、とつぜん、一瞬部屋が揺れ、次の瞬間には部屋の電気がふっと消えてしまった。
「やだ……!」
慌てて部屋を出ようと扉に手を掛ける。が、外から鍵が掛かっているのか開かない。
「え、ちょっと、やだ!」
そのとき、ふと、友人の言葉を思い出す。
――「出るんだよ」。
次の瞬間、背中になにか気配を感じて振り返る少女。
「――――――――!!」
――そして翌日。
少女は変わり果てた姿で見つかった。
やって来た警察の話によると、事件性はなく、自殺に間違いないだろうという。
だが、生徒達の間ではこう囁かれていた。
「自殺した男子生徒に殺されたんだ」と――
「じ、条件ってなに?」
一緒に部室へと連れてきた華藤さんに尋ねる。メガネは外れたままだ。
華藤さんは最初きょろきょろとしていたが、私の言葉を聞くと、
「ふ〜ん。ちょうどいい感じ」
なにか1人で納得したように言う。
「え? なにが?」
私が尋ねると、そんな私の顔をまじまじと見て、冷たく笑いながら言う。
「知らないのぉ、木谷さん? この部室がもともとなんの部屋だったのか」
「え?」
「え! あ、もしかして……!」
あすちゃんが驚いた表情になる。なにかに気付いたようだ。
「なに?」
まったく話が見えない私は、1人やきもき。――と思ったけど、ほとんどの人はわからないという顔をしていた。
華藤さんがにやにやして言った。
「被服室だったんだよぉ」
「被服室?」
「そう。今は特別教室棟にある部屋で授業を行ってるけど、もともとはここに被服室があったんだよぉ」
着ぐるみ理事長は、もともとなにかの部屋だったことは言っていたけれど――被服室がここにあったなんて、初耳だ。
「なんでなくなったんですかね?」
茜さんが疑問をあげる。――そう、それ。そのとおり。
「特別教室棟に新しく部屋ができたからじゃねーのか?」
――あぁ、そっか。単純にそれか。
森の言葉に納得していたところ、華籐さんは首を左右に振った。
そして、華藤さんはにやにやしたまま言った。
「それは、事件があったんだよー」
「事件……?」
数年前――
「ねぇー帰ろ!」
放課後の教室。1人の少女が、クラスメートの少女に声を掛ける。
「ごめん。家庭科の課題がまだ終わってなくて、今日残らないと……」
誘われたクラスメートの少女は、片手を立てて謝った。
「もー! しょうがないな。先帰るよ」
「うん、ごめんね」
仕方なく先に帰ろうと教室を出ようとしたとき、彼女は思い出したように言った。
「そうだ。気を付けてね、被服室」
「え? なにが……?」
扉に手を掛けて、少女は振り返る。
「被服室にはね、出るんだよ……」
「えー? で、出るって……なにがよぉ……」
少し怯えながらも、「冗談でしょ」といった表情で笑う。
しかし、少女は神妙な面持ちで言った。
「出るんだよ……。いじめを苦に自殺した男子生徒の霊が。あんたみたいに放課後課題のために残ってたんだけど、いじめてた生徒が鍵を掛けちゃったんだって。もうずっといじめられてきた彼は、翌日、自殺してたのを見つけられたって……」
「や、やぁだー! ちょっとやめてよー!」
クラスメートの少女は怖くなり、慌てて止めた。その目にはうっすら涙が浮かんでいる。
話をしていた少女はいたずらっぽく笑うと、
「なんてねー! まぁ気を付けてね! じゃ、お先に」
そう告げて教室を出て行った。
少女はほっと溜め息を吐くと、被服室へと向かった。
「まったくもー。冗談ばっかり言うんだから」
ぷりぷり怒りながら作業を進める。そのまま集中してしまい、気付けば下校時刻をとうに回っていた。窓の外はすでに真っ暗だ。
きりを付けて片付けを始めると、とつぜん、一瞬部屋が揺れ、次の瞬間には部屋の電気がふっと消えてしまった。
「やだ……!」
慌てて部屋を出ようと扉に手を掛ける。が、外から鍵が掛かっているのか開かない。
「え、ちょっと、やだ!」
そのとき、ふと、友人の言葉を思い出す。
――「出るんだよ」。
次の瞬間、背中になにか気配を感じて振り返る少女。
「――――――――!!」
――そして翌日。
少女は変わり果てた姿で見つかった。
やって来た警察の話によると、事件性はなく、自殺に間違いないだろうという。
だが、生徒達の間ではこう囁かれていた。
「自殺した男子生徒に殺されたんだ」と――