ひので町コント   7丁目:七星部長と他2名

 ひので高校にある部活動の1つ。『漫画研究会』。
 放課後、大輝と日和は活動が行われている教室の扉の前にいた。

「失礼しまーす。こんにちはー!」

 元気な声をあげて扉を開ける。
 2人はこの部活のメンバーで、中では既に先輩達が活動を――

「ちぃーす」
「うふふふふ……」

 ぐりぐりぐりぐり。

 漫画研究会のリーダーである七星(ななほし)部長(研究会長)が2人に向かって挨拶を返す。
 彼の足の下にはもう1人メンバーがいた。

「あ、あの、大丈夫ですか……? やめるように言いましょうか……?」

 大輝が思わず、七星部長の足で思い切り踏みつけられている人物――七夕(たなばた)先輩に声をかける。

「えー? えへへへへ……」

 嬉しそうに笑う七夕先輩。
 大輝は、

(あ、この人、もうダメだ)

 と死んだ目で思った。

「七星ー! 見て見てー! おもしろい漫画見つけたー! あと、面白い漫画描いたよー!」

 声をあげながら勢いよく教室へと入ってきたのは七五三(しめ)先輩。この漫画研究会の副部長(副研究会長)だ。
 この3人がこの漫画研究会の3年生メンバーだった。

「おー? どれどれー?」

 七五三先輩が持っていた漫画と自作漫画を取り上げ、さっと目を通す。

「没。でもこの漫画はおもしろいから借りる」

「えー!? 借りパクやめろよぉー」

「知らん」

「七星ー!」

「それよりもっとおもしろい漫画描いてこい」

「もーしょうがないにゃあ」

 ぐりぐりぐりぐり。

 そんな会話をしている間にも、七夕先輩を踏みつけることは忘れない。

「えへへへ……。うふふふ……」

(これあかんやつや)

 大輝と日和は2年生。
 大輝はこの光景を部活がある時は毎回目撃しているものの、やっぱり慣れないのであった。

(というか、なんだこの部活。3年生は力関係できあがってるんだよなー)

 七星部長には通り名があった。
 それは「女王様(♂)」。
 漫画研究会の3年生2人を引き連れている女王様。全員男だが。

「まぁいーや。じゃ、俺帰る。2年生、あとよろしく」

 いつの間に帰り支度をしたのか、七星部長はカバンを持ってさっさと教室を出ていってしまった。

「あ! 七星! 俺も帰るぅー!」

「待って、待って! 七星ぃー!」

 その後を必死で追いかけていく七五三先輩と七夕先輩。

「…………漫画、描くか……」


「大輝、漫画できたのかー?」

「おぅ。まだ4コマ1つだけだけど。日和は?」

「描いてないよ?」

「描けよ!!!!!!!!????????」

「いいじゃんいいじゃん。それより、大輝が描いたやつ見せてよ♪」

「まったく…………」

 ぺらり。
 描いた漫画を渡した。


@おはよう。きょうもいい天気だ。

A朝ごはんを食べよう。

B

Cパクパクモグモグ。パクパクモグモグ。

Dパクパクモグモグ。


「5コマじゃないか――――っ! ていうか、文章じゃ伝わらない! あと、これパクリじゃないかーっ! 元ネタは『パクパクモグモグ』で検索してください! ってかダメダメ! パクリ、ダメ、絶対!」

 これくらい許容範囲かなと思って。

「今の言い訳、誰!?」

「え? パクリ? 普通に描いたんだけど……」

「おまえは天才か!!!!!!!!!!!!」

「これ、今度のマンガコンテストに出そうと思ってるんだけど……」

「テレながらなんてこと言ってるの!? やめて!」

「え? なんで?」

「いろいろアウトぉ――――――――!!!!」

「えー?」

「ていうか、本来俺がボケなのに、大輝といるとたまにツッコミ役になるのはなんでなんだー!?」

「え?」

「計算ボケより天然ボケの方が強いんですね、わかります!」

「それより、日和も描けよ。部活中だろ?」

「描かないよ」

「なんでだよ! 描けよ!!」

 そんな日和の描く漫画も、やる気がないので大体同じくらいひどいのでした。


「で? おまえはなんで俺を連れてこんな部に入ろうと思ったの?」

「そりゃぁ、ここなら漫画読めそうだったからー」

「…………」