僕の生存日記   第11話:ハート・クリーンロッカー

 ていうか、なんで僕は隠れてしまったんだろう。なにをやばいと思ったんだろう。
 別に、僕が思わず余計なことを言おうとしてただけで、状況的には普通に会話してただけのはずで、たぶん、周りから見てもただ2人でお話してたんだなーくらいのものだったはずで。
 そりゃ、正気に戻った僕の顔は真っ赤になってたかもしれないけど、でも、きっと、今よりはずっとマシな状況だったに違いない。

 ――なんで、僕は……黒井さんと一緒に掃除用具をしまうロッカーの中に隠れてしまっているのか!!!!!!!!

 なにこの密室空間で2人きりっていうか、身動きすら取れないよ! 体も普通に密着してるし! なにこれ!
 なんで僕こんなことしたアアアアアアアアアアアアッッ!!!!????

「あ、あの、川野辺くん……!?」
 目の前わずか数cmの距離にいる黒井さんに声をかけられ、非常にテンパる。
「は、はい! なにか!?」
「あの……出ませんか……?」
 そうだね! そりゃそうだよね! なにやってんだろう!
「そ、そうだね! ごめん……!」

「葉乃〜! 戻ったぞー! おまえの好きなサイダー買ってきた!」
「今池が戻ってこないが、先に話し合いを進めるか」

 ガララと大きく教室の扉が開く音がする。
 この声は、千羽と神成先輩だろう。

「あれ? 葉乃?」

 って、この状況、完全にロッカーから出るタイミング逃した――――――――ッ!!!!

「…………」
「………………」

 息を潜めて、僕らはロッカーの中にいた。
 本当になにをやっているんだろうか。ひとまず、そんなことを考えるのはやめて。現状から抜け出すには、どうすればいいんだろうか。うなだれながらも必死に考える。

 顔を上げると、目の前に黒井さんの顔があった。当然だけど。
 彼女は僕をじーっと見ていた。くりくりとした大きくかわいらしい瞳で。
 あぁぁ、やばい。こっち見ないで。
 恥ずかしさと気まずさで頭が爆発しそうだ。

 次の瞬間だった。



「こ、ン、の、変態――――――――――――――――――――――――ッ!!!!!!!!!!!!」



 なにが起こったかはさっぱり分からないんだけど。
 僕の体は宙を舞っていた。