僕の生存日記   番外編2:事件は遊園地裏で起こしてた(第6話裏)

 俺、『千羽 緋路』は『神成 躍人』と合流して、『川野辺 葉乃』と『黒井 姫』の2人の仲を邪魔をする計画を実行! ――するはずだが、さっそく葉乃たちを見失った! ありえない!
 ちなみに、今回『今池 輝也』の出番は最後までありません。

「いったいどこへ行ったんだ、葉乃!」
 遊園地へ入るや否や、急いで辺りを捜し始める。
「園内放送でもかけてもらうか? 迷子のご案内ってな」
 神成躍人がそんなことを言う。
 カバが逆立ちしてそうな頭の割に、よく思いついたと言いたいところだが――。
「そんなことしたら、葉乃たちに尾行してることがばれちゃうでしょーに! いいですか。今回のことは2人には極秘! こっそりと裏から邪魔をするんですよ! わかってますか!?」
 俺が言うと、神成躍人はあっさりと、
「あぁ、そうだったな。すまんすまん」
 ――はぁ……。
 計画は本当に上手くいくのか? うかつに作戦を持ちかけるんじゃなかったな……。
 しかし、後悔したところで今更遅い。ここはこいつを上手く操って成功に導かせる他ないのだ。
「とにかく、まずは2人を探してください。くれぐれも気付かれないように!」
「任せろ!」
 神成躍人は自信満々に拳を作ってうなずいた。
 正直任せられないが、ここは信じるしかない。
「じゃあ、俺はこっちを探しますので、先輩はあっちを――」
「おい。いたぞ」
「早っ!!??」
 彼が指差すほうを見ると、そこには葉乃と黒井姫の2人が仲良さそうにどこかに向かうところで――ギギギギギギ……!
「というか一緒にいるのは黒井嬢じゃないか。川野辺クンの好きな人って黒井嬢だったのか。――で、どうするんだ?」
 はっ!!
 そうだ、嫉妬している場合ではない。さっそく作戦を実行に移さねば!
「用意してくれたんですよね?」
「あぁ、あれか! ちゃんと持ってきたぞ。ほら、約束のブツだ」
 神成躍人から包みを受け取る。
 中を確認すると、そこにはしっかりと――猫のきぐるみが入っていた。
「ありがとうございます」
 さっそくそれに着替える。
 第1の作戦は、こうだ。

「お嬢ちゃん。風船はいかが?」
 猫のきぐるみを着た俺が黒井姫に声をかける。
 黒井姫は嬉しそうにそれを受け取る。
 しかし、よく見れば、その風船は――!
『私、実は彼氏がいるの。ごめんね』
 マンガによくあるふきだしの形をしていて、そんなことが書いてあるのだ。
 そう。まるで、黒井姫がそのセリフを言っているように――!
「そんな……。黒井さんに彼氏がいたなんて……」
 ショックを受ける葉乃。
 俺はそんな葉乃の傍へ寄ると、そっと包むように慰める。
「葉乃。おまえには俺がいるじゃないか……」
「千羽……」
 葉乃が潤んだ瞳で俺を見る。
 俺はなにも言わずうなずいて(以下略)

「はーっはっはっはっはっ! よっしゃ、テンション上がってきたァ――――!!!!」
「おぉ! よくわからんが、その意気だな!」
「でも、よくきぐるみなんてありましたね?」
 ふと疑問に思ったことを訊いた。
 最初にこの作戦を提示したときは、正直きぐるみをどこから調達したものかと思っていたのだが――あっさりと神成躍人が提供を申し出てくれたのだ。
 神成躍人は言った。
「なぁに、気にすることはない。ただ、俺の知り合いにいつもきぐるみを着ているやつがいて、そいつから借りてきただけだ」
 どんな知り合い!?
 まぁ、こんな見た目ヤクザの人間関係なんて知りたくもないが――。
 と、とにかく! 作戦決行だ!



「お嬢ちゃん。風船はいかが?」
 向こうから近寄ってきた黒井姫に声をかけた。葉乃は遠くで見守っている。
 黒井姫は嬉しそうにうなずいた。
「はい!」
 ふふふ……。これが罠だとも知らずに!
 俺はそんな黒井姫に風船を手渡そうとした――、
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
 ――のだが。
 ものすごい勢いで向こうから駆けてきた葉乃に奪われてしまった!
 くそっ! やっぱり葉乃はかわいいな、おい!
 じゃなくて、いったいなんだ!? まさかもうばれたのか!?
 いやまさか――、と、とりあえず、ここは撤退したほうがいいだろう!
 驚いた黒井姫と葉乃が2人でわたわたと慌てている間に、俺はさっとその場から離れて身を隠した。

「なんっっっっじゃあこりゃああああああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 突然、葉乃の声が辺りに響き渡った。
 驚いてそちらを見ると、葉乃からふきだしが出ている。
『私、実は彼氏がいるの。ごめんね』
 ――………………。
「はははははははのおおおおおおおおおお!!!! いつの間に付き合って……相手は誰だアッー!」
「OKOK。マテ! ときに落ち着けって! あのふきだし型風船はおまえが渡したんだろう!」
「はーはー……!」
 神成躍人にいさめられ、俺は冷静さを取り戻した。
 まるで葉乃が言っているように見え、つい血管が2、3本切れるくらい取り乱してしまった。
 ――こうして、作戦は失敗に終わった……。

「くそっ……! 今回は失敗したが、次はこうはいかないぞ、黒井姫……!」
 そうだ。今回は運悪く失敗してしまったが、作戦はまだまだたくさん用意してあるのだ! 次回こそは成功させてみせる!
「では、場所を移すか!」
「そうですね。さっそく、次の作戦の舞台へ参りましょう!」
 待ってろ、黒井姫! そして、俺の葉乃――!
 闘志を燃やしつつ、番外編3へ続く!! ……って続くのか、この話!?