僕の生存日記   番外編3:事件は遊園地裏で起こしてた(第7話裏)

 どうもこんにちは。『千羽 緋路』です。なぜ毎ページ毎ページにキャラクター紹介入れてるんだ? 正直めんどくさい。とか思ったりもするが、今回も紹介する。
 俺は『神成 躍人』と共に、『川野辺 葉乃』と『黒井 姫』の仲をぶち壊すべく遊園地へやって来た。
 ちなみに、『今池 輝也』は無関係です。

 遊園地へカップルが行くと別れやすい。そんな話を聞いたことはないか。
 その理由は、相手の嫌な面が見えやすいからだと考える。
 たとえば、待ち時間の長さにイライラしてしまう。さらに、その間に相手との会話が弾まないなんてことになると最悪だ。この人はつまらないなんて思われてしまう。大抵の女は、男にリードしてもらいたいと思う。男がリードしなければいけない。楽しんでもらえるようにご機嫌取りをしなければならない。しかし、それも無理をして続けていれば疲れてしまうことだろう。体力的にも歩き回って疲れるだろうに、その状態ではいやになってしまうだろう。そして、だんだんと会話自体もなくなり……2人の関係は終わる。
 もちろん、それがすべてのカップルに当てはまるわけではない。
 そういうこともありうるという1つの可能性。
 その可能性がもし低いものだったとしたら、俺はその確率を引き上げてみせよう。この話の通り、あいつらの仲を悪くさせてやる!

 葉乃と黒井姫の尾行を続ける。その2人が真っ先に向かっている先、それがお化け屋敷だと気付いた。
 そうか、そういえば黒井姫はホラー好きなのだ。それを見越して計画だって立てているんだ。
 落ち着いて考えればわかることだったのに、姿が見えなくなったりしたこともあって、つい冷静を欠いてしまった。
「先輩! 次の作戦に移りますよ!」
「おぉ、あれだな!」
 第2の作戦、決行。

 俺たちはお化け屋敷へ先回りして入り口で待ち構えた。もちろん、変装済みである。
「このグッズを売ればいいんだな」
 神成躍人がそれを手にして、まじまじと見ながら言った。
「そうですよ。このプラスチックで作ったドクロ、これを高額で売りつけるんです」
 プラスチックとはいえども、これだけ精巧に作ったドクロだ。黒井姫はきっと欲しがるだろう! これだけ俺が頑張って作ったんだからな! いじれるのは機械だけじゃないんだぞ、工学系なめんな!
 この最高傑作を高額で売りつける!
 手が出ない、しかし欲しい! そして男である葉乃にねだる! しかし葉乃も買えるわけがない!
 こうして、黒井姫は葉乃に愛想をつかれるのでした。めでたしめでたし。
 そんなシナリオだ!

「あっ! 来ました、来ましたよ!」
 葉乃と黒井姫がやって来た。俺は神成躍人に目配せをした。彼も2人の姿に気付いて頷く。
 俺が2人に声をかける。
「やぁやぁ、お2人さん。このお化け屋敷に入るんですか?」
「はい〜」
「そうですけど……。えーっと、なにか……?」
 葉乃が訝しげに見ている……。俺は咳払いを1つした。
「えーっと、現在このお化け屋敷の特別限定グッズがございまして。……興味ありませんか?」
「特別限定グッズ……? 興味ありますぅ」
 黒井姫が目を輝かせた。俺も瞳の奥が怪しく輝く。
「そうですか。では、特別に! ご覧ください、このドクロ!」
 俺は俺お手製のプラスチックドクロを差し出した!
 黒井姫がいっそう目を輝かせた!
(よっしゃ! ナイス反応!)
「うっわぁ〜……! すごいですぅ。キレイです!」
「へぇ。見事なもんだねぇ」
 2人が感心して見ている。
 そうだろうとも、そうだろうとも! なんたって、この俺が作ったんだからな。
「これ、いくらですかぁ?」
 上手い具合に黒井姫が食いついてきた! 俺は両の手のひらを広げた。

「10万円です」

「「じゅっ…………!!!!」」
 2人が固まる。
 さぁねだれ! すぐねだれ!
「え、えっと、あの……」
 黒井姫が困惑している。
「安くなりませんか?」
 葉乃が聞いてくる。おまえ……買ってやる気なのか!?
「や、安くはできませんよ。なんたって、特別限定グッズですから!」
 少し動揺して答える。
 自分から買ってやる気なのか、葉乃……で、でも、さすがに買えないだろ! 黒井姫がここで無理やりねだってくれれば……きっと愛想がつくはずだ……!
「…………川野辺くん」
 黒井姫が葉乃を呼ぶ。
 来たか!!!!
「ん?」
 葉乃が困ったように返事した。
 そして、黒井姫は言った。
「……残念ですけど、行きましょう」
「「え!?」」
 俺と葉乃の声がはもった。
 え、諦めるのか!? 諦められるのか!?
「でも、黒井さん。これ、欲しいんじゃ……」
 葉乃が尋ねると、黒井姫は意外にも笑った。
「さすがに高すぎて買えませんよぉ! それより早く中に入りましょ〜!」
「い、いいの?」
「はい」
 葉乃に笑顔で答える黒井姫。
「――…………!!!!」
 しまったぁ――――――! さ、さすがに高すぎたか……無理があった……! 一介の高校生が手を出せるような額じゃないもんな。そりゃ逆に諦めもつく……。完全に計算ミスだった。
 俺はその場に膝を着いた。まさしくorzな状態だ。
 2人は俺など気にも留めず、その場を去ろうとした……。と、そこへ。

「待て」

 声をかけた人物。それは、さっきから成り行きを見ているだけだった神成躍人だった。
「はい?」
 2人が振り返った。
 そして、神成躍人の本領発揮である。

「おいこら……。買っていけよ……!」

 ――……ひ――――――――っ!

 俺も、そして行こうとしていた2人も、思わず縮み上がった。
 これは俺を手伝ってくれてるのか? でもこれでは意味がない。買わせることが目的なんじゃない。黒井姫がねだらないとダメなんだ。
 それよりも――このヤクザな雰囲気(オーラ)で、ばれる!
「押し売りはまずいです!」
 俺はそう言って神成躍人を止めた。
 本当にまずいわ、オーラ的な意味で。
「いいのか、買わせなくて!」
 いい。余計なこと言わなくていい。
 俺が神成躍人を抑えている間に、2人は逃げるようにその場を後にした。

 ……はぁ。また失敗、か…………。