エンタメクラブ Act.1:着ぐるみ、現る
「それで、いったいどんな部活にするんですか?」
私は部活を作るにあたって1番重要なことを訊いてみた。
その質問に、着ぐるみ理事長は即答した。
「謎部!!」
「却下!!」
彼女の答えに、私もまた即答した。
「なんで!?」
「なんでもなにも!!」
――この人はマジメに話しているのだろうか?
私の頭に、そんな素朴な疑問がよぎった。
「なんでダメなのさ〜?」
なおも訊いてくる着ぐるみ理事長に、私はひときわ大きな溜め息を吐くことしかできなかった。
「ぶ〜……☆ まあ、そんなことはどーでもいいよ」
――イヤ、よくないでしょう!
「それよりも、重要なことがあるんだっ♪」
「……部活の内容よりも大事なことって、いったいなんですか……? しかも、なぜ『♪』付き……?」
――もう、なにを言われても驚かないぞ、きっと……。
「部員がいない。今んところ、私とキミとの2人だけの部活……」
私と着ぐるみ理事長の間に、北極の冷たい風が吹いたのを、そのとき、私ははっきりと感じた……。
「付き合ってられるか――――っっ!!」
「あ、それじゃあ、森君にも入ってもらおう! ちょうど、すぐそこにいることだし」
ポン! と手を打ち、着ぐるみ理事長が笑顔でとんでもないことを言い放った。
「な……っ!?」
――ていうか、『えむ同盟』はどうなった?
「よーし、ナ〜イスアイディ〜ア♪ そうと決まればさっそく、森君のもとへレッツゴーだ!」
「ちょーっっと待った――っ!?」
おもわず、私は彼女を引き止めていた。
「なーに? 部活の勧誘がいけないこと?」
「そっ……そーじゃないですけど……」
――絶対、わざとだろ。
この人って、きっと、人のイヤガラセをするのが大好きなんだろう。だから、私の困るようなことをどんどん言ってくるんだ!
……それとも、こっちのことを考えて、そう言ってくれているのだろうか? 教室にいる時間以外でも、一緒にいる機会を作るために……。私が彼の前で、素直に振る舞えるように……?
でも……やっぱりなんか恥ずかしい!
だって、この人といると、私まで変な人に見られそうで!!
「やっぱり、やめましょう! 別の人を誘っておきますから!」
私がそう言ったときには、すでに遅かった。
「って、もう話しかけてる――――!?」
私はもう慌てて、着ぐるみ理事長のもとへと飛んでいった。
「あー、笑ちゃん」
「『あー、笑ちゃん』じゃあないですよぉっ!」
――この人ってば、どこまでマイペースなんだろう。
私は、なんだかいろんなことにやきもきしている自分が情けなく、そして恥ずかしくなってきて、逃げるようにその場を離れ……ようとした。
しかし、そのとき。
「木谷。おまえが新しい部の部長をやるんだって?」
「もっ……森……!」
彼が――森 裕樹が話しかけてきたのだ。
「しかも、まだ部員揃ってないんだろ? 今、この猫の着ぐるみ着た自称理事長が話してくれたぜ。それで、俺に入ってくれだってよ」
「そ……それで、森はこの部活に入りたいの?」
――おー……私ってば、自ら訊いちまったぜ!
それで、森の答えは――
「あー……俺? 俺、放課後は早く帰りたいんだよなぁ〜」
その答えを聞いて、私は悲しいような、それでもホッとしたような、不思議な気持ちになった。
「うん、そっか……。まあ、そりゃそうだよねぇ……」
私がその場を去ろうとしたとき、森が私を引き止めた。
「あ、でも!」
「え?」
振り返った私に、森が笑って言った。
「部活の内容によっちゃあ、入ってもいいぞ。なんか面白いこととかやんのか?」
「え……? 内容……? それは〜……」
私はチラッと着ぐるみ理事長のほうを盗み見た。
着ぐるみ理事長は私と目が合うとにっこり笑い、
「なんでもいいよ。つーか、なにをやりたい?」
「え? そんな部なのか?」
「うん、そーなの。つーか、部活を作りたいとは思ったものの、どんな部にしようかなんてまったく考えてなかったのさ」
「って、そんなんで、私を部長にするとかワケのワカランこと言い出したのか――――!?」
着ぐるみ理事長の言葉に、おもわず憤慨して叫ぶ。
しかし、彼女がそんなことで動揺したりするハズもなく――
「うん」
さらりと。
――これだけ自分の思い通りに行動できたら、人生楽しいんだろうなぁ……。
「ヘンな部活だな」
私達の話を聞いていた森が、苦笑いを浮かべて言った。
着ぐるみ理事長は、その森の言葉を気にする様子もなく、笑顔のまま言う。
「そーだなぁ……。自分の趣味を追求する……楽しいことをする部活ってことで、『エンターテインメントクラブ』って部活名でどう? 略して『エンタメクラブ』! もっと略して『エンラブ』ってのは?」
「『エンクラ』じゃねーのか?」
「なんか……なんとなく、響きがヤじゃん? 微妙じゃん?」
「そーか??」
「そんな部だったら、森君は入る?」
――って、着ぐるみ理事長と森……なんだかいい雰囲気で話してんじゃん?
私の気持ちを知っていての、着ぐるみ理事長のこの行動に、私は少なからず嫌悪感を覚えた。
「木谷! 俺、この部入るわ」
森がとつぜん、私のほうを振り返ってそう言った。
「……って、ええ!?」
「なんか面白そーだしよー。それに……」
「森君、私と気が合うしねー」
「そうそう」
そう言いながら、森と着ぐるみ理事長はがっちり肩を組んだ。
そのとき、私の中でなにかが切れた気がした。
「……あっ、そう……」
そう一言だけ言って、私は自分の席に着いた。
私と森の席はそれなりに離れている。
――どーせ、もうすぐ授業も始まるし。
「じゃあ、ヒロ君、笑ちゃん。放課後にまた来るから。あとでねー」
着ぐるみ理事長が私達に向かって、笑顔で手を振る。
森も着ぐるみ理事長に向かって手を振り返した。
そして、着ぐるみ理事長はやっと私達の教室から出て行った……。
「それで、いったいどんな部活にするんですか?」
私は部活を作るにあたって1番重要なことを訊いてみた。
その質問に、着ぐるみ理事長は即答した。
「謎部!!」
「却下!!」
彼女の答えに、私もまた即答した。
「なんで!?」
「なんでもなにも!!」
――この人はマジメに話しているのだろうか?
私の頭に、そんな素朴な疑問がよぎった。
「なんでダメなのさ〜?」
なおも訊いてくる着ぐるみ理事長に、私はひときわ大きな溜め息を吐くことしかできなかった。
「ぶ〜……☆ まあ、そんなことはどーでもいいよ」
――イヤ、よくないでしょう!
「それよりも、重要なことがあるんだっ♪」
「……部活の内容よりも大事なことって、いったいなんですか……? しかも、なぜ『♪』付き……?」
――もう、なにを言われても驚かないぞ、きっと……。
「部員がいない。今んところ、私とキミとの2人だけの部活……」
私と着ぐるみ理事長の間に、北極の冷たい風が吹いたのを、そのとき、私ははっきりと感じた……。
「付き合ってられるか――――っっ!!」
「あ、それじゃあ、森君にも入ってもらおう! ちょうど、すぐそこにいることだし」
ポン! と手を打ち、着ぐるみ理事長が笑顔でとんでもないことを言い放った。
「な……っ!?」
――ていうか、『えむ同盟』はどうなった?
「よーし、ナ〜イスアイディ〜ア♪ そうと決まればさっそく、森君のもとへレッツゴーだ!」
「ちょーっっと待った――っ!?」
おもわず、私は彼女を引き止めていた。
「なーに? 部活の勧誘がいけないこと?」
「そっ……そーじゃないですけど……」
――絶対、わざとだろ。
この人って、きっと、人のイヤガラセをするのが大好きなんだろう。だから、私の困るようなことをどんどん言ってくるんだ!
……それとも、こっちのことを考えて、そう言ってくれているのだろうか? 教室にいる時間以外でも、一緒にいる機会を作るために……。私が彼の前で、素直に振る舞えるように……?
でも……やっぱりなんか恥ずかしい!
だって、この人といると、私まで変な人に見られそうで!!
「やっぱり、やめましょう! 別の人を誘っておきますから!」
私がそう言ったときには、すでに遅かった。
「って、もう話しかけてる――――!?」
私はもう慌てて、着ぐるみ理事長のもとへと飛んでいった。
「あー、笑ちゃん」
「『あー、笑ちゃん』じゃあないですよぉっ!」
――この人ってば、どこまでマイペースなんだろう。
私は、なんだかいろんなことにやきもきしている自分が情けなく、そして恥ずかしくなってきて、逃げるようにその場を離れ……ようとした。
しかし、そのとき。
「木谷。おまえが新しい部の部長をやるんだって?」
「もっ……森……!」
彼が――森 裕樹が話しかけてきたのだ。
「しかも、まだ部員揃ってないんだろ? 今、この猫の着ぐるみ着た自称理事長が話してくれたぜ。それで、俺に入ってくれだってよ」
「そ……それで、森はこの部活に入りたいの?」
――おー……私ってば、自ら訊いちまったぜ!
それで、森の答えは――
「あー……俺? 俺、放課後は早く帰りたいんだよなぁ〜」
その答えを聞いて、私は悲しいような、それでもホッとしたような、不思議な気持ちになった。
「うん、そっか……。まあ、そりゃそうだよねぇ……」
私がその場を去ろうとしたとき、森が私を引き止めた。
「あ、でも!」
「え?」
振り返った私に、森が笑って言った。
「部活の内容によっちゃあ、入ってもいいぞ。なんか面白いこととかやんのか?」
「え……? 内容……? それは〜……」
私はチラッと着ぐるみ理事長のほうを盗み見た。
着ぐるみ理事長は私と目が合うとにっこり笑い、
「なんでもいいよ。つーか、なにをやりたい?」
「え? そんな部なのか?」
「うん、そーなの。つーか、部活を作りたいとは思ったものの、どんな部にしようかなんてまったく考えてなかったのさ」
「って、そんなんで、私を部長にするとかワケのワカランこと言い出したのか――――!?」
着ぐるみ理事長の言葉に、おもわず憤慨して叫ぶ。
しかし、彼女がそんなことで動揺したりするハズもなく――
「うん」
さらりと。
――これだけ自分の思い通りに行動できたら、人生楽しいんだろうなぁ……。
「ヘンな部活だな」
私達の話を聞いていた森が、苦笑いを浮かべて言った。
着ぐるみ理事長は、その森の言葉を気にする様子もなく、笑顔のまま言う。
「そーだなぁ……。自分の趣味を追求する……楽しいことをする部活ってことで、『エンターテインメントクラブ』って部活名でどう? 略して『エンタメクラブ』! もっと略して『エンラブ』ってのは?」
「『エンクラ』じゃねーのか?」
「なんか……なんとなく、響きがヤじゃん? 微妙じゃん?」
「そーか??」
「そんな部だったら、森君は入る?」
――って、着ぐるみ理事長と森……なんだかいい雰囲気で話してんじゃん?
私の気持ちを知っていての、着ぐるみ理事長のこの行動に、私は少なからず嫌悪感を覚えた。
「木谷! 俺、この部入るわ」
森がとつぜん、私のほうを振り返ってそう言った。
「……って、ええ!?」
「なんか面白そーだしよー。それに……」
「森君、私と気が合うしねー」
「そうそう」
そう言いながら、森と着ぐるみ理事長はがっちり肩を組んだ。
そのとき、私の中でなにかが切れた気がした。
「……あっ、そう……」
そう一言だけ言って、私は自分の席に着いた。
私と森の席はそれなりに離れている。
――どーせ、もうすぐ授業も始まるし。
「じゃあ、ヒロ君、笑ちゃん。放課後にまた来るから。あとでねー」
着ぐるみ理事長が私達に向かって、笑顔で手を振る。
森も着ぐるみ理事長に向かって手を振り返した。
そして、着ぐるみ理事長はやっと私達の教室から出て行った……。