君の目が覚めるまでに

 君の目が覚めるまでに、終えないといけないことがある。

 このミッションをクリアする為に絶対に必要なこと――。
 散らかった部屋を慌てて片付ける。真っ赤に染まってしまったテーブルクロスも急いで洗濯機へ。何事もなかったかのように、極めて冷静に。落ち着け。まだ間に合う。
 納得がいくまで部屋をぴかぴかにし、新しく出したテーブルクロスを敷いて、この時の為に準備したものを台所から運ぶ。見渡す範囲、ちゃんと綺麗に飾り付けた。今度は失敗せず、必要なものは全て用意した。

 あと必要なものは――、
 カチャリと音を立てて扉が開く。
 ――そう、あと必要なものは、君だけ。

 寝ぼけ眼をこする君と、対して完全に目が冴えてしまっている僕。
 高鳴る鼓動を抑え、背中に隠した銀色に光るそれをぎゅっと握った。




 某アプリのお題『目が覚めるまでに』に投稿したのほぼそのままです。意味がわかると的な。捉え方次第でストーリーが変わる。
 解説1:君がゆっくり寝ている隙に、プロポーズの準備をする僕。椅子をひっくり返し、テーブルにワインを零し、部屋を散らかしてしまった。慌てて部屋を片付け、綺麗にし、準備した料理を運ぶ。今度は問題なく用意できた。ようやく起きてきた君。僕は小さな箱を握った。箱の中では指輪が光っている。
 解説2:夜、君を殺す為に家に忍び込む僕。そこを君の家族に見つかり、殺害してしまった。慌てて死体を片付け、部屋を綺麗にし、包丁を準備する。今度は失敗せずに君を殺そう。起きて部屋に入ってきた君。僕は包丁を握った。


――――2023/08/08 川柳えむ