神様の望んだセカイ Chapter05:彼女のために
避難所へ向かうグループと一緒に数分歩く。辿り着いた場所には小学校があり、そこの体育館が避難所になっているようだった。
小学校の窓は割れたりもしていたが、体育館のほうは問題なく使用できているようだ。周囲の崩壊具合と比べると、ここはずいぶんと丈夫にできているものなのだなと、京太は感心した。
「この体育館が避難所になっているのよ。とりあえず、あなたもここで休みなさい」
連れてきてくれたおばさんが京太にそう言う。
しかし、自分のことよりも、置いてきた都のことが心配だ。
「大丈夫です。待っている人がいるので、水だけでも貰えれば」
体育館の前では、小さなランプが置かれた長机で、ちょうど紙のカップに汲んだ水や乾パンの缶詰などを配っていた。
京太はその列に並ぶ。
ようやく自分が貰える番になって、京太はまず自分の分の水と乾パンを受け取った後、水を配っている人に言った。
「すいません。水を2つ貰えますか?」
「2つ?」
怪訝そうな顔をして、水を配っていた男の人が聞き返してくる。
「はい。離れたところで待っている人がいて……」
京太が事情を話そうとすると、その男の人はそれを遮って言った。
「困るんだよね。この水にも限りがあるんだ。今は1人1杯。そういう決まりだ」
「でも――」
「もう1杯水が欲しければその子を連れてきなさい」
言い返そうにも、まったく聞く耳を持ってくれない。
京太が困っていると、後ろに並んでいた男が声をかけてくれた。
「それならおじさんのお水をあげよう。一緒にその子のところまで行こうか」
突然の申し出に驚き、男の顔をまじまじと見る。浅黒い肌。落ち窪んだ目に鷲鼻、大きな口。顎には無造作に髭を生やしている。年齢は40前後といったところか? 彼は薄手のニット帽を深く被っていた。
もともと捻くれ者なところもあり、京太はおもわず疑ってしまう。
――いったいなにを企んでいるんだ? と。
しかし、それ以外に水をもう1つ貰う方法もない。京太はその男に頼るほかなかった。
「お願いします」
「よし、じゃあ行こうか」
水を受け取ると、一緒に都のところまで歩き出した。
もし、こいつと都を会わせて、こいつが彼女になにかしたら――?
――いや、大丈夫だ。自分は神様なのだ。きっと、どうにか彼女を助けてみせる。
もうすぐ都が待っている場所に辿り着く。この辺は人をあまり見かけない。みんなもう避難所へと行ってしまったのかもしれない。
あと少し――そこで、京太は突然腕を捕まれた。弾みで、持っていた水を落としてしまう。
「えっ?」
そのまま崩れかけた建物の脇の、狭い路地裏に連れ込まれた。
力いっぱい地面に引きずり倒され、体勢を崩してしまった京太は、しこたま頭を打ち付けてしまった。
「いっ……!」
倒れた京太の上に、男が馬乗りになる。
「なにす――」
声を上げようとしたところへ、男が被っていたニット帽を口に詰め込まれる。声が出せない。
男はニタニタと気色の悪い笑みを浮かべ、京太の体を弄り始めた。
「――!?」
――なんだこいつは。そういう趣味の男なのか。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
しかし、馬乗りになられているせいで、腕すら上手く動かせない。
――どうにか、どうにかしないと。
そのとき、再び余震が襲った。そこまで大きいものではなかったが、男の体勢を崩させるには十分だった。
京太はするりと男の下から腕を抜き出すと、その手に持っていた乾パンの缶詰をおもいきり男の顔面に投げつけてやった!
「ぐぁっ……!」
男が顔を押さえて痛みに悶えているところを突き飛ばし、咥えていたニット帽を吐き出すと、京太は全速力でその場から逃げ出した。
――どうして。ドウシテ、イツモ、コンナ……。
京太は都のところまで走ると、まだ調子の悪そうな都の腕を引いた。
「悪い。この辺は危険だ。逃げるぞ!」
返事も聞かず、京太は都の腕を引っ張ったまま走り出した。
避難所へ向かうグループと一緒に数分歩く。辿り着いた場所には小学校があり、そこの体育館が避難所になっているようだった。
小学校の窓は割れたりもしていたが、体育館のほうは問題なく使用できているようだ。周囲の崩壊具合と比べると、ここはずいぶんと丈夫にできているものなのだなと、京太は感心した。
「この体育館が避難所になっているのよ。とりあえず、あなたもここで休みなさい」
連れてきてくれたおばさんが京太にそう言う。
しかし、自分のことよりも、置いてきた都のことが心配だ。
「大丈夫です。待っている人がいるので、水だけでも貰えれば」
体育館の前では、小さなランプが置かれた長机で、ちょうど紙のカップに汲んだ水や乾パンの缶詰などを配っていた。
京太はその列に並ぶ。
ようやく自分が貰える番になって、京太はまず自分の分の水と乾パンを受け取った後、水を配っている人に言った。
「すいません。水を2つ貰えますか?」
「2つ?」
怪訝そうな顔をして、水を配っていた男の人が聞き返してくる。
「はい。離れたところで待っている人がいて……」
京太が事情を話そうとすると、その男の人はそれを遮って言った。
「困るんだよね。この水にも限りがあるんだ。今は1人1杯。そういう決まりだ」
「でも――」
「もう1杯水が欲しければその子を連れてきなさい」
言い返そうにも、まったく聞く耳を持ってくれない。
京太が困っていると、後ろに並んでいた男が声をかけてくれた。
「それならおじさんのお水をあげよう。一緒にその子のところまで行こうか」
突然の申し出に驚き、男の顔をまじまじと見る。浅黒い肌。落ち窪んだ目に鷲鼻、大きな口。顎には無造作に髭を生やしている。年齢は40前後といったところか? 彼は薄手のニット帽を深く被っていた。
もともと捻くれ者なところもあり、京太はおもわず疑ってしまう。
――いったいなにを企んでいるんだ? と。
しかし、それ以外に水をもう1つ貰う方法もない。京太はその男に頼るほかなかった。
「お願いします」
「よし、じゃあ行こうか」
水を受け取ると、一緒に都のところまで歩き出した。
もし、こいつと都を会わせて、こいつが彼女になにかしたら――?
――いや、大丈夫だ。自分は神様なのだ。きっと、どうにか彼女を助けてみせる。
もうすぐ都が待っている場所に辿り着く。この辺は人をあまり見かけない。みんなもう避難所へと行ってしまったのかもしれない。
あと少し――そこで、京太は突然腕を捕まれた。弾みで、持っていた水を落としてしまう。
「えっ?」
そのまま崩れかけた建物の脇の、狭い路地裏に連れ込まれた。
力いっぱい地面に引きずり倒され、体勢を崩してしまった京太は、しこたま頭を打ち付けてしまった。
「いっ……!」
倒れた京太の上に、男が馬乗りになる。
「なにす――」
声を上げようとしたところへ、男が被っていたニット帽を口に詰め込まれる。声が出せない。
男はニタニタと気色の悪い笑みを浮かべ、京太の体を弄り始めた。
「――!?」
――なんだこいつは。そういう趣味の男なのか。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
しかし、馬乗りになられているせいで、腕すら上手く動かせない。
――どうにか、どうにかしないと。
そのとき、再び余震が襲った。そこまで大きいものではなかったが、男の体勢を崩させるには十分だった。
京太はするりと男の下から腕を抜き出すと、その手に持っていた乾パンの缶詰をおもいきり男の顔面に投げつけてやった!
「ぐぁっ……!」
男が顔を押さえて痛みに悶えているところを突き飛ばし、咥えていたニット帽を吐き出すと、京太は全速力でその場から逃げ出した。
――どうして。ドウシテ、イツモ、コンナ……。
京太は都のところまで走ると、まだ調子の悪そうな都の腕を引いた。
「悪い。この辺は危険だ。逃げるぞ!」
返事も聞かず、京太は都の腕を引っ張ったまま走り出した。