★ Christmas Tales 2016 ★




〜 眠れる森の美女 〜

 むかしむかしあるところにお姫様が生まれました。
 王様と王妃様は大喜びでお披露目パーティーをすることにしました。
 さて、この国には魔法使いが13人いました。
 その13人をパーティーに呼ぼうと考えたのですが、困ったことに魔法使い用の食器が12セットしかありませんでした。
王(緋路)「困った困った。こういうときはあみだくじだ!」
王妃(玲音)「そんな決め方でいいんでしょうか……!? 食器ないなら、紙皿とかじゃダメですかね、さすがに……」
王(緋路)「ていうか、なんで葉乃が王妃じゃないんだ!?」
王妃(玲音)「え、えっと、すみません……」
 そんな感じで、ハズレに行き当たった魔法使いはパーティーに呼ばれないことになりました。

 パーティー当日――
サンタ魔法使い(日和)「お招きありがとうございますー! お礼に俺達魔法使いからそれぞれ魔法でなにかいいことをプレゼントするよ!」
 魔法使い達から、幸せになりますように、キレイになりますように、優しくなりますように、賢くなりますようになどなど……姫にいろんな魔法的なものを掛けてもらって王と王妃はご満悦です。
王(緋路)「ところでこの中に、王妃を葉乃に変える魔法が掛けられるヤツはいないか!?」
王妃(玲音)「えぇぇ。す、すごく好きなんですね……」
 と、そこへ1人の魔法使いがやってきました。
 それは、ハズレが当たってしまった魔法使いでした。
ハズレ魔法使い(茜)「よくも仲間ハズレにしてくれましたね。って、名前表記酷っ!」
 ハズレ魔法使いが怒りながら言います。
ハズレ魔法使い(茜)「私からも魔法のプレゼントがあります。姫は13歳で糸車の針に刺されて死ぬ!」
王妃(玲音)「15歳もしくは16歳でなく!?」
ハズレ魔法使い(茜)「姫役の子にあわせてみました。では、さらば!」
 ハズレ魔法使いは姫に魔法で呪いを掛けると去っていきました。
王妃(玲音)「そんな……」
王(緋路)「どうすりゃいいんだ……?」
サンタ魔法使い(日和)「まだ魔法を掛けてないこのサンタ魔法使いにお任せあれ! 魔法を解除はできないけど、弱くすることは可能! サンタからのプレゼントでなんとかしてみせようー!」
 サンタ魔法使いがそう言いました。
王妃(玲音)「ほ、本当ですか……!」
王(緋路)「どのへんがサンタ関係あるんだ、これ」
 サンタ魔法使いが魔法を掛けます。
サンタ魔法使い(日和)「姫は死なずに100年眠ってから目覚める! その前になんか素敵な王子様にキスをもらえればすぐに目覚める!」
王(緋路)「……これ、弱くなったのか?」
王妃(玲音)「死ぬよりはマシかと……」
王(緋路)「キスで目覚めるなら誰かにしてもらえばいいんじゃ? 姫役的に桃太郎とか」
王妃(玲音)「ほかの物語から引っ張ってくるのはちょっと……」
王(緋路)「まぁ糸車に刺されなければ問題ないわけだ。国中の糸車を燃やせ!」
サンタ魔法使い(日和)「暖炉で燃やされると煙突から入れなくなるから困るな。サンタ的に」
王(緋路)「無理してサンタ要素入れなくても!」
 そんなこんなで、この日を境に国中から糸車が消えました。

 それから13年。
 なんの問題もなく、姫はすくすくと育ちました。
 王と王妃はいつ呪いが始まるのではないかと気が気でありませんでした。
 なので、誰も来られないような高い高い塔の上に姫を幽閉することにしました。
眠れる森の美女(アルト)「物語違いません!!??」
 幽閉された姫は窓からぼんやりと外を眺めていました。
眠れる森の美女(アルト)「なにこの展開」
 すると塔の下のほうから声が聞こえてきました。
???「♪姫ーよ姫ー。その長い髪を垂らしておくれ。カモンエブリバディアーイエー」
眠れる森の美女(アルト)「前同じようなネタやった!」
 姫が窓から顔を出すと、姫の髪はするすると伸びて、塔の下にいるらしい誰かの元へと垂れました。
 誰かはその髪をつたって塔を上ってきました。
眠れる森の美女(アルト)「うを。重っ!」
 上ってきたのはハズレ魔法使いでした。
眠れる森の美女(アルト)「なんとなく私に似ている!」
ハズレ魔法使い(茜)「それはモデルが……じゃなくて。えぇと、私はハズレ魔法使いと呼ばれている魔法使いです。姫にプレゼントを持ってきましたよ」
眠れる森の美女(アルト)「わーい♪」
 ハズレ魔法使いは糸車をプレゼントしました。なんにも疑わずに、姫はそれを受け取りました。
眠れる森の美女(アルト)「なにこれ初めて見た。使ってみてもいいですか?」
ハズレ魔法使い(茜)「どうぞどうぞ」
眠れる森の美女(アルト)「痛っ……!」
 糸車の針が姫の指に刺さりました。
 ちなみに、糸車には針が大量にくっつけられていて、まるでウニのようになっていました。そりゃあ触れば怪我もします。
 針が刺さった姫は、サンタ魔法使いの魔法のとおり、眠りにつきました。
 眠りの魔法は姫だけでなく、お城全体にかかりました。王も王妃も、動物も家具も建物も、なにもかもが長い長い眠りにつきました。
王(緋路)「なんで俺達まで眠るんだ。話が違うぞ魔法使い!」
 眠りについたお城で、茨だけが伸び続けていきました。
 こうして、姫は眠れる森の美女(名前表記は最初からそのままでしたが)として、世界に話が広がっていきました。

王子(松)「ここが茨城か」
 何年もして、茨に覆われたお城、略して茨城に王子がやって来ました。
王子(松)「ここの奥にあるのか……?」
 噂を聞きつけて来た王子は、奥にあるお城を目指し、茨に手を掛けました。
 と、そこへ――
ハズレ魔法使い(茜)「なにをしに来たんです?」
 ハズレ魔法使いが現れました。
王子(松)「お、おまえは――」
ハズレ魔法使い(茜)「私はこのお城に魔法をかけた魔法使いです」
王子(松)「――かわいい!」
ハズレ魔法使い(茜)「姫の噂を聞きつけて来たなら、私のことも知って――って、え?」
王子(松)「というわけで、この魔法使いを連れて帰る」
ハズレ魔法使い(茜)「ち、ちょっ……待ってください!!!!???? 姫を助けに来たんじゃなかったのですか!?」
王子(松)「俺は茨城の噂を聞いて納豆買いに来たんだぞ」
ハズレ魔法使い(茜)「リアル茨城!?」
 ハズレ魔法使いは混乱している。
王子(松)「納豆とスマイルください」
ハズレ魔法使い(茜)「ちょっと話聞いてください!!」
 かくかくしかじかまるまるうまうま。
王子(松)「――つまり。この城には眠れる森の美女って呼ばれる姫が眠っていて、俺がそれを起こしに来た王子だと思ったんだな?」
ハズレ魔法使い(茜)「そうです」
 なんとか一通り説明をしたハズレ魔法使い。疲れ切って肩で息をしています。
王子(松)「まぁ、とりあえずどんな子が眠っているかだけ見てみっか。美女だって言うし!」
 王子はかわいい子が好きなのでした。
ハズレ魔法使い(茜)「……そうですか。それでは、私はこれで」
 すっと冷めた表情で、ハズレ魔法使いはどこかへ行こうとしました。
王子(松)「ちょっと待て! どこ行くんだよ! 連れて帰るって言っただろー!」
ハズレ魔法使い(茜)「えぇっ!? 姫を起こしに行くって言っているのに!?」
王子(松)「それはそれ、これはこれ! つーか、とりあえず見てみるだけだ!」
ハズレ魔法使い(茜)「そんなことが許されるとでも!?」
王子(松)「よっしゃ! 行くぞ!」
ハズレ魔法使い(茜)「ひ、引っ張らないでくださーい! 人攫い〜!」
 ハズレ魔法使いは王子にずるずると引きずられていきました。
サンタ魔法使い(日和)「あれー? 俺の出番ないんだけど。ていうか、ハズレ魔法使いは王子を邪魔するつもりで出てきたんじゃなかったの? どういうことなの。クソワロタw」

 お城の周りの茨をザクザクと切り倒し、王子はお城の入口へと辿り着きました。
 そして、ハズレ魔法使いは思い出しました。
ハズレ魔法使い(茜)「あっ。姫、幽閉されてたから、お城じゃなくて隣の高い高い塔で眠ってたんでした」
王子(松)「無駄足!」

 王子は今度こそ眠れる森の美女(長)が眠っている高い高い塔の入口へと辿り着きました。
 塔を見上げ、王子は呟きました。
王子(松)「高過ぎて上れる気がしねぇ」
ハズレ魔法使い(茜)「姫が眠りについて長い年月が経ちました。その間に技術は発達し、どんどん便利な世の中になっていきました。そんなわけで、いつからかエレベーターが設置されています」
王子(松)「かがくのちからってすげー!」
 いつの間にこんな茨に覆われたお城に誰がエレベーターをなんのためにどうやって――という5W1Hな疑問はツッコミがいなかったので置いておいて。
 2人はエレベーターで眠れる森の美女の部屋までやって来ました。
王子(松)「ちわー王子でーす」
ハズレ魔法使い(茜)「ノリ軽っ」
王子(松)「三河屋的なノリで」
ハズレ魔法使い(茜)「なんでやねん」
王子(松)「じゃあ、○HKの集金に来ました。払ってくださーい」
ハズレ魔法使い(茜)「だから、なんで!?」
王子(松)「じゃあ、借金の取り立てに……」
ハズレ魔法使い(茜)「なんか小ネタ的なのやらないといけない縛りなんですか!?」
王子(松)「姫がびっくりして目覚めるかと」
ハズレ魔法使い(茜)「なるほど、そういう」
サンタ魔法使い(日和)「納得するんかーい!」
 サンタ魔法使いが現れました。
サンタ魔法使い(日和)「はっ……! ツッコミがあまりにもアレでつい出てきてしまった……。俺だっていちおうボケなのに!」
王子(松)「誰だ」
ハズレ魔法使い(茜)「私だって生粋のツッコミですよ!」
サンタ魔法使い(日和)「どこが!?」
 眠れる森の美女の横で、ぎゃーぎゃーわーわー騒ぐ王子と魔法使い。
 それでも眠れる森の美女は起きません。
王子(松)「これでも起きないとは。どんだけネボスケなんだ」
サンタ魔法使い(日和)「いや、魔法だから!」
王子(松)「ていうか、姫がどんなのかちゃんと見てねーや。見てみよう」
 部屋では、かわいらしい姫がすやすやと眠っています。そして、どことなくハズレ魔法使いと似ています。
王子(松)「かわいい! で、なんだっけ? キスすりゃ目覚めるんだっけ!?」
サンタ魔法使い(日和)「そう」
王子(松)「んじゃ……」
 王子が姫にキスをしようと――
 じ――――っ……。
 ――ハズレ魔法使いが見ています。
王子(松)「はっ! 誤解だ! 俺はハズレ魔法使いが好きだ!」
ハズレ魔法使い(茜)「えっ!? はっ!? な、なにを!?」
 2人は混乱している。
サンタ魔法使い(日和)「というか、13歳の子にキスって、若干ロリコンの気がするよね」
王子(松)「それも誤解だ! だいたい数歳の差しかないのに!」
ハズレ魔法使い(茜)「数歳の差なら手を出してもいいと」
王子(松)「ち、違うっ!」
サンタ魔法使い(日和)「で、どうすんの? キスするの? しないの?」
王子(松)「どうすりゃいいんだよ! このままじゃ目覚めねーんだろ!?」
ハズレ魔法使い(茜)「すればいいんじゃないですかね」
王子(松)「その冷たい視線やめてくれ!」
サンタ魔法使い(日和)「しょうがないにゃあ」
 サンタ魔法使いは白い袋を担いでいたのですが、その袋をがさごそと漁ると、なにかを取り出しました。
王子(松)「これは――魚?」
サンタ魔法使い(日和)「そう。キスっていう魚」
王子(松)「キス」
サンタ魔法使い(日和)「キスあげれば目覚めるよ。口づけととか接吻とか言ってないし」
王子(松)「最初っからそれを出せええええ――――――――!!!!!!!!!!!!」
 王子が大きな声を出した、そのときです。
眠れる森の美女(アルト)「ふあぁ〜。あれ? おはよーっす」
 なんと! 眠れる森の美女が目を覚ましました!
ハズレ魔法使い(茜)「あ」
王子(松)「え!? まだ渡してないのに、なんで!?」
サンタ魔法使い(日和)「あ。ちょうど100年経ったみたいだね」
王子(松)「キス出した意味は!?」
 眠れる森の美女は100年の眠りから目を覚ましました。
 それと同時に、お城全体も魔法が解けました。茨は消え、王や王妃、建物もなにもかもが、眠りから覚めました。
ハズレ魔法使い(茜)「解けてしまいましたね……。まぁ、でも、もういいです。100年も経ってしまいましたし、仲間ハズレにされたことは、これでチャラにします」
サンタ魔法使い(日和)「はたして仲間ハズレと100年眠らせることが同レベルなのかどうなのか」
眠れる森の美女(アルト)「ていうか、誰!? あ、ハズレ魔法使いさん。おはようございます」
ハズレ魔法使い(茜)「おはようございます」
サンタ魔法使い(日和)「寝起きの女の子の部屋に男がいるのも悪いから、俺は帰るね。あ、せっかくだから、帰る前に魚のキスプレゼントしておくよ。サンタだし。それじゃーねー」
眠れる森の美女(アルト)「あ、はい? ありがとうございます? じゃーねー」
王子(松)「じゃあ俺も帰るわ。おじゃましましたー。ハズレ魔法使い、帰るぞー」
ハズレ魔法使い(茜)「ナチュラルになぜ私まで!?」
王子(松)「連れて帰るって言っただろー」
ハズレ魔法使い(茜)「えぇぇぇぇ。人攫い〜!」
眠れる森の美女(アルト)「え? えぇ??」
 誘拐犯を見送って、眠れる森の美女は1人塔に残されました。
眠れる森の美女(アルト)「……って、あれ!? なんかすごい乗り物? できてる! なにこれ。これで下に降りれるの!? じゃあ、久しぶりにお城に戻ってお父様とお母様の顔見に行きましょ」
 眠れる森の美女はエレベーターで1階まで降り、塔を出ると、お城に戻りました。
 王と王妃もどうやらなんか魔法は解けたらしいということを知り、家族仲良くお城で暮らしましたとさ。
 ちなみに、王子とハズレ魔法使いがどうなったかは、2人と神様だけが知っています。たぶん。
ハズレ魔法使い(茜)「へるぷみー!」
 めでたしめでたし。

眠れる森の美女
キャスト
眠れる森の美女 アルト・クリーム (グローリ・ワーカ)
千羽 緋路 (僕の生存日記)
王妃 白川 玲音 (ミス研日誌)
サンタ魔法使い 日和 (ひので町コント)
ハズレ魔法使い 千種 茜 (エンタメクラブ)
王子 草薙 松 (エンタメクラブ)